空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

リアクション公開中!

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


世界を産むために 2

 儀式の準備も大詰めの中、イーダフェルト神殿内部でもしこかしこで戦闘が発生していた。
「さーちあんどですとろい!」
 チャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)が、持っていたステッキで遺跡の床を叩いた。そこから広がる炎の衝撃波が、近くにまで迫っていた敵の姿を炙り出す。
「もう、なんで、こんなに入り込んできてるのよ!」
 確実に敵を狙撃しながら、リン・ダージ(りん・だーじ)が毒づいた。
「小さいからでしょお?」
「もう、しんじらんない」
 チャイ・セイロンの言葉に答えながら、リン・ダージがガーターベルトに挟んでおいたロングバレルを抜き取ると、クルリと一回転させてから銃に差し込んで、シャープシューターで新たに現れた敵の頭部を吹き飛ばした。
「新手が来たようですね」
 アルティマトゥーレでやや大きい敵を氷づけにしたペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)が、息つく暇もないなと顔を顰める。
「まあ、でも、最初に突っ込んできたのは倒したかな」
 ペコ・フラワリーが足止めした敵をソニックブレードで両断したマサラ・アッサム(まさら・あっさむ)が言った。
「気を抜かないで。大型です」
 アラザルク・ミトゥナが、前方に現れた光り輝く人型をさして、ゴチメイたちに注意をうながした。大きさは、五メートル近くもある。その下半身からは、ぼたぼたと小型の人型が増殖して新たな脅威としてむかってきていた。
「どいて、あたしたちが片づけるわ!」
 それを見て、後方から、ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)が走ってきた。
「来い、エレメント・ブレーカー!」
「来て、ジュエル・ブレーカー!」
 それぞれ星拳を召喚すると、大型の取り巻きの人型が放つ光弾を、フィールドバリアで無効化して吸収していく。
「邪魔だ!」
 ガラス片をかき混ぜるような音をたててむかってくる人型を、ココ・カンパーニュが等活地獄で薙ぎ払う。
 さらに、アルディミアク・ミトゥナが、飛翔させたウイングソードと共に剣の舞いを放って雑魚を切り刻んだ。
 だが、大元の大型の光る人型を倒さなければきりがない。
 その敵が、大きく胸を反らせて何かの態勢に入った。
「各自、防御しろ!」
 アラザルク・ミトゥナが叫んだ。
「輝け、双星拳スター・ブレーカー!」
 ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナが片手を固く握り合って叫んだ。二つの星拳が光のラインで繋がり、本来の力を取り戻す。敵の放った強力なビームが星拳スター・ブレーカーの持つエネルギー吸収結界に吸い込まれて消滅した。
「そろそろいいわよ!! あんたのためにここまで来たんだから」
 上を見あげて、ココ・カンパーニュが叫んだ。
「さて、それじゃあ、ゴチメイ隊VS仮面ツァンダーって感じで、ヒーロー共演と参りましょうか!」
 空中に飛来したジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)の上で、風森 巽(かぜもり・たつみ)が言った。傍らにはティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)の姿もある。
「ココが頼まなければ、お前など乗せはしないのだがな」
「す、すいません。今だけたのんます」
 淡々と言うジャワ・ディンブラに、風森巽が慌てて頼んだ。
「まあ、今だけな」
 敵の攻撃を避けて、ジャワ・ディンブラが旋回した。周囲で、アルディミアク・ミトゥナの剣の舞いが、敵の攻撃を相殺していく。
「より良い未来だ、平和な世界だなんて、祈って手にするもんじゃない。皆で作りあげてくもんだ。だから、我らは皆の無事を祈るだけだ……。変身っ!
 ジャワ・ディンブラの背の上で、風森巽が叫んだ。
 ツァンダー変身ベルトの力で、仮面ツァンダーに変身する。
「蒼い空からやってきて、緑の地球を救う者! 仮面ツァンダー! ソゥッ! クゥッ! ワンッ!!」
 赤いマフラーを靡かせて、風森巽がポーズをとった。
「行きますよ、ココさん」
「おう!」
 大型の敵にむかって急降下するジャワ・ディンブラからの風森巽の声に、ココ・カンパーニュが答えた。
ツァンダージャーンプ! とうっ!
 ジャワ・ディンブラの上から風森巽がジャンプした。その全身が、光条エネルギーにつつまれて発光する。
 だが、すでに風森巽にむかって光る人型がビームの発射態勢に入っていった。
「させるか!」
 ココ・カンパーニュが、星拳を突き出した。風森巽が進む前方、光る人型との間に、虹色に輝く円錐状の力場が現れる。
「行きなさい!」
 アルディミアク・ミトゥナも、同様にして星拳を突き出した。さらに、もう一つ、虹色に輝く半透明の円錐型の力場が現れた。
 光る人型の放ったビームが、ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナの作り出したバリアを直撃する。ビームが八方に分かれ、後方へと弾かれていった。
蒼空いなづまキィィィィック!!
 ビームの奔流を切り裂いて進みながら、風森巽のキックが二つのバリアを押し出す。キックのひねりによって激しく回転するバリアが、光る人型の頭部に突き刺さった。そのまま、蒼空稲妻キックが光る人型の身体を真っ二つに切り裂いていく。
 片手の指先を軽く床に触れさせて着地のポーズをとる風森巽の背後で、粉砕された光る人型が爆散して砕け散る。
「ここは通さん!」
 すっくと立ちあがると、風森巽が残る光る人型たちを指さして言った。
 そこへもう一人のヒーローが現れる。
「魔装変身! シャインヴェイダー、推参!」
 現れたのは魔装侵攻 シャインヴェイダー(まそうしんこう・しゃいんう゛ぇいだー)を身に纏った蔵部 食人(くらべ・はみと)だった。
 彼の顔はとても晴れやかな物だった。
 それは先ほどの電話のせいだ。

 少し前。
 食人は絆のケータイを手に持ちながらも、何もできないでいた。
 友人であるリファニーにかけようとしても、何と言っていいのか自分の中で若干の戸惑いがあるからだ。
「もう、じれったいな! えいっ!」
「あ、ちょ」
 それを後押ししたのがシャインヴェイダーだった。
 もうこうなってしまっては、伝えるしかない。
「……リファニー、俺だ、食人だ。勝手に消えた時の事、まだ俺は許してないからな?
 言いたい事は山ほどあるが、それは全て片付いたらにするよ。
 あぁ、最後にこれだけ……おかえり」
 そう言って、絆のケータイは役目を終えて壊れた。
 そして食人の顔はとても晴れやかになっていた。
「『この戦いが終わったら〜』ってそれ死亡フラグみたいだけどねぇ」
 というシャインヴェイダーの突っ込みも気にしないくらい。

「一緒に戦わせてくれないか?」
 その申し出に巽は何も言わず、手を差し出した。
 二人は熱い握手を交わしたのだ。
 そこへ敵を群れになって襲い掛かってくる。
「“夜明け前が一番暗く怖い、だけどそれを越えたらきっと明るく優しい朝が待ってるはずさ!”」
 巽が敵をひきつけてくれている間に、食人が天高く舞い上がり声を引き絞る。
「シャイン! ヴェイダァァ! キィィィックッ!!」

 優しい朝を皆が迎えられるようにと、
 そのみんなの無事を祈り、切り開くためにと。
 二人の一撃は、文字通り敵をまとめて一蹴した。

 戦場同じく、酒杜 陽一(さかもり・よういち)酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)エクス・ネフィリム(えくす・ねふぃりむ)神条 和麻(しんじょう・かずま)エリス・スカーレット(えりす・すかーれっと)も戦いを続けていた。
「やれやれ、電話してる暇もないんだな」
「そうですね。……遂に最後の戦い。彼女の魂と共に赴きましょう」
「死んた人みたいに言うなよ!
 何か、心なしか写真のフリーレも怒ってる様に見えるし……」
 そんな軽快なやりとりをかわしながらも陽一は敵の攻撃を回避し、ソード・オブ・リコを振るいまとめて敵を切り伏せていく。
 他にも三上山の大百足に、ヴィサルガ・シューニャを利用して美由子が持つギフトたちを融合させ、持てる力を遺憾なく発揮させていた。
「ここまで残ったの僕らと……エクスだけか」
 戦いを続ける凶司はあたりを見渡して、自分の周りにはエクスとベルネッサ・ローザフレック(べるねっさ・ろーざふれっく)しかいないことを確認した。
「もう、切っても切ってもその倍になってかえってくる感じ、反則だよー!」
「だからって、やられるわけにはいかないわ。
 この弾が尽きる限り、戦い続ける!」
 ベルネッサが自分の愛銃に弾を装填する。
 その間、同じ銃を持つ凶司がフォロー。エクスは前に出て何度でも敵を切り倒す。
「戦い続けても勝ち目がないってのは地味にきますね……」
「それでも戦うわ」

ジャキンッ

 ベルネッサが装填を終える。
「勿論です。それに逃げられない理由があるってのは、ちょっと救いになってますから」
 凶司がちらりとベルネッサを見る。それに、ベルネッサが気付いた。
「あなたの救いの女神ね。悪くないわ」
「えっ」
「“それじゃナイト様。ちゃんと守ってよね。この世界も、私も、ね”」
「……勿論だ!」
「ちょっとー! 二人でいちゃついてないで助けてよー!」
 エクスの叫びに二人はすかさず援護に入る。
 二挺の“ベルネッサ”から放たれる弾丸は、空を裂かんばかりの弾丸と化し、敵に着弾する。
「でも少し不安ね。世界が産まれても、その世界がちゃんと正常に動くか」
 ベルネッサは自らの内に秘めていた不安を吐露する。
 そんなベルネッサの本心に触れた凶司とエクスは、力強く言った。
「“酷い始まりでもいいことあるよ! だから頑張るのっ!”」
「“進んでみりゃなんとかなるもんですよ。僕だってそうでしたからね”
 それに今、ちょっと報われた気がします」
「そう、じゃあ戦いましょう。私たちの、裂空の弾丸で!」
「はい!」

「ルシア! 無茶だけはするなよ」
「了解よっ。絶対に、リファニーは守ってみせる!」
 エリス・スカーレット(えりす・すかーれっと)を纏った神条 和麻(しんじょう・かずま)はルシアにそう忠告する。
(エリスには敵を倒す力はありません。
 ですが敵の攻撃を防ぐための力は持っています。それを生かして戦います!)
「ありがとう、エリス。お前がいてくれれば俺は100の力で戦える!」
 そう言って、向かってくる敵の攻撃をかわしてカウンターを入れる和麻。
 その横いから複数の敵がやってくる。しかし、それをルシアーがカバーする。
「下がりなさいっ!」
 超能力を生かして、敵の動きを抑制する。
 その隙を逃さず、和麻が切り込み、複数の敵を横一文字に一刀両断する。
「そして、ルシアが隣にいてくれれば、120以上の力を発揮できる!
 この未熟な俺でも二人と仲間がいてくれれば十分に戦える!」
 四方八方から攻めてくる敵、その前方のみに集中して敵を迎え撃つ和麻。
 その横、後ろからくる敵には目もくれない。
 当然だ。
「させないわよっ! 散りなさい!」
 右はルシアが。
「狙い打ちます!」
 左は凶司たちが。
「そこらでストップ、だ」
 後ろは陽一たちが。
 共に戦う仲間たちが、和麻にはついていた。
「私たちには、明日が待っているのよ!」
 ルシアの叫びにエリスも同調する。
(“どんなに辛くても諦めなければ必ず幸せは待っているのです。
 だからエリス達はまだ見ぬ明日を掴んで見せるのです!”)
 二人の言葉を聞いて和麻は目を瞑り、静かに呟いた。
「“もちろん未来は不安ばかりだ、絶望だってあるかもしれない。
 だけど絶望の先には必ず希望があるんだ。その希望を見る為に俺たちはその先に行く!”」
 呟きは叫びとなり、叫びは皆を鼓舞する武器となる。
「絶望の先にある希望を掴むため、ここから先は誰も通さない!」
 和麻が突貫し、そのフォローをルシアや凶司たちがする。
「さあ、あなたも大切な人に思いを伝えてあげてください。
 僕たちがフォローしますから!」
 ベルネッサが大きく跳ねる。
「……ありがとう。少しだけ待っていてくれ」
 陽一は仲間に頭を下げて、絆のケータイを取り出す。
 勿論、想いを伝える相手は最愛の人、高根沢 理子(たかねざわ・りこ)
「理子さん。ネフェルティティ様のお手伝い、頑張って。
 それと戦いが終わったら……二人のこれからのこと、ゆっくり話そう。
 だから必ず再会しよう。それじゃ」
 想いを告げると、絆のケータイは瞬く間にスクラップになった。
「皆、
“記憶の中の大切な人を思い出して。その人の為に自分の中の希望をもう一度信じてくれ”
 そうれば俺たちは負けない。負けるわけが、ない!」
 己の持てる強さを全発揮し、イーダフェルトの防衛を誓う陽一。
 それは敵にとっては、自分たちを殲滅せんとする、比類のない強さを振るう暴風のようにも思えていた。
 七人は共に協力しあい、沸いてくる敵を倒し続けた。