空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

リアクション公開中!

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


巨大人型 1

 イーダフェルト防衛指揮官、羅 英照(ろー・いんざお)
 この劣勢においてもその冷静さは失われておらず、
 全部隊への指示は鮮やかで、的確さを欠くことはなかった。
「そちらの様子はどうか」
 英照の無線相手はセレス・クロフォード(せれす・くろふぉーど)
「はい。こちら鋼鉄の獅子は他部隊とも連携しつつ敵を攻撃。
 敵の数は増える一方ですが、巨大人型もこちらに接近。
 これより、本丸を落とします」
 セレスが無線通信をしている間、シェザーレ・ブラウン(しぇざーれ・ぶらうん)は警戒に当たっていた。
 敵がいつどこから侵入してくるかわらかない以上、油断はできない。
 幸いにも不意打ちはないようだ。
「了解した。そのまま攻撃を継続、敵の巨大人型を撃破。“頼むぞ”」
「了解です! 必ず、撃破の報、いれさせていただきます!」
 無線を切った瞬間、艦内部まで響くような、何かの雄たけびが聞こえる。
 それは巨大人型の、泣き声だった。

 敵が巨大人型に吸い込まれていく。
 その光景は、巨大人型がより強力に、より強固になっていくことを予感させる。
「だからと言って、オレとナナとの未来を邪魔しないでもらえますか。……消えろ」
 その様子にまったく怯むこともなく、長距離からライフルで巨大人型を撃つのはVEXENに駆るルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)ソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)
「ううー運転はするけど、危ないのは勘弁ですよー!」
「わかっていますよ。接近することもないですから、もう少し辛抱してください」
 そんな会話をしながら、エネルギーに余裕がある限り、巨大人型を狙い打つルース。
「あらあら、余裕ですのね」
 ルースの横、そこにはNachtigallに乗るナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)音羽 逢(おとわ・あい)がいた。
「ナナたちはもう少し接近します。何かあったときはよろしくお願いしますね」
「それではいくでござる!」
 メインパイロット、逢が果敢に接近していく。
 ある程度近づいたところで20ミリレーザーバルカンを射出。
 吸収されずにこちらに近づいてくる敵を迎撃する。
「私も援護します!」
 屠龍がアサルトライフルを連射し、敵を牽制。
 桜花 舞(おうか・まい)赤城 静(あかぎ・しずか)は敵から目を逸らさない。
 じわじわと弾をあてていき、更にナナたちの援護が入り、敵を十字砲火する。
 あわや蜂の巣となった敵はそのままゆらゆらと空の底へと消えていった。
「援護感謝いたしますね」
「私たちはラグナロクを守るんだから、これくらいはしないと。
 ダリルさんも乗ってる、だから絶対守り抜くわ!」
「……通信で聞こえるわよ」
「……! キャー! 今の、今のはなしで!」
「あら、いいじゃないですか。きっとその思いは何ものにも変えがたいことですわ」
 あたふたと取り繕おうとする舞に、ナナが諭すように言ってきかせる。
 それを聞いた舞も落ち着きを取り戻た。赤面は免れないが。
「二機とも動かないでっ!」
 ルースの通信、その数秒後にライフルから射出された機晶エネルギーの塊は、
 二機に接近していた敵の頭部を破砕した。
「す、すいませんっ!」
「いえいえ。我々はチームですから頑張っていきましょう」
「はいっ! よーし、いっくぞー!」
「ま、世界が新しくなったら……告白してみなさいな」
「いやそれは、その。とととにかく今は任務優先なんだから! 行くわよ! 静!」
 未だ動揺する舞を見て静は笑って「はいはい」とだけ答えた。
 そんな舞に襲い掛かる敵。だがもう舞を落とすことはできない。
 その目にはこの先、未来が見えていた。必ず掴むと意志が揺らめいていた。
「“大好きな人ができたの。私、生きてて良かったなって……”
 だから、私は戦うわ!」
「“一歩ずつ進んでいける。そんな未来を信じてる”
 だから私も戦うわ」
 そんな二人の姿を見て、ナナも思う。
「……ナナたちも、この戦いが終わったら、新しい世界でゆっくりしましょうか」
 それはルースに向けられた言葉。
「そうだな。その時は、武器も持たずに一緒に歩こう。新しい世界を」
 それはナナに向けられた言葉。
 そして感極まった逢が叫ぶ。
「拙者は、ミス・ブシドー……またの名を、マスク・ザ・ブシドー!
 そう、“拙者たちは、幸いを見届ける者也! 世界は輝いて御座る!”」
 言って、Nachtigallが空を走る。
「“皆と共にすごす穏やかな日常。決して悪くないさ”」
 言って、VEXENとルースが穏やかに笑った気がした。
「――幸せへと導ければ、それは、ナナにとっても幸い。
 “少々甘えん坊でもあったコンロン帝も一緒に祈っている事でしょうか……
 新世界よ、産まれておいで”」
 言って、ナナは優しい瞳で世界を見やった。

「そっちのはこっちで修理するから! そっちはこのパーツを!」
 ラグナロク艦内、そこでイコン修理を担当していたテテ・マリクル(てて・まりくる)が忙しそうに声を出し指示を出している。
 仲間から借り受けた様々なイコンも思い切り使い、パーツごとごっそり交換、
 こうすることで修理のタイムロスを最低限にして、即座に発艦させる。
 その大胆なイコン修理は今回は効果抜群だった。
 眠 美影(ねむり・みかげ)もその手伝いをしていた。どこもかしこも、大慌てだ。
「美影、平気か? 疲れたら休んでもいいからな!」
「まだ平気よ。ここで頑張って、生きて、テテとの未来を掴むために……」
「美影……」
 美影はハッとした。今自分が言ったこと、普段ならとてもじゃない口にしないこと。
 疲れと、緊張のせいでつい言ってしまった。
「べ、別にこれはその、特別なあれとかはなくっ!?」
 テテが美影の手を握って、にっと笑った。
「ありがとっ! 俺も美影と一緒にまだまだ駆け回りたい!
 だから一緒に頑張ろう。やれること、全力でやろう!」
 一点の曇りもないテテの笑顔に美影はもう頷くしかなかった。