空京

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海京神社の地下を探索する:page02


 階段直下の戦闘は無事勝利に終わり、ここを拠点にして各人は海京神社の地下探索に入って行った。
 なお、この場所はソフィア・ギルマン(そふぃあ・ぎるまん)が「ベースキャンプ」という看板を上げ、医療用品や弾薬、食事を提供する簡易コンビニを設営していた。
「備えあれば、憂いなし! 暗い所には懐中電灯、予備の電池、タオルにホッカイロ、ジュースはいかがー!?」
 ジメジメとした陰鬱な地下の雰囲気とは対照的に、商魂たくましく明るい客引き声が辺りに響く。
「商品は全部良心価格! 飲食スペースも用意しているから、休憩の利用も待ってるぜ!」
 ソフィアが呼び込みを行う隣では、パートナーのハリー・ヴァンス(はりー・う゛ぁんす)が宣伝の傍らでソロバン計算に忙しくしている。
「お買い上げありがとう! こちらは、合計で600Gだよ!」
「それじゃあ1000Gの預かりで、400Gのお釣りだ。またのご利用、待ってるぜ!」
 こうして、商魂たくましいソフィアとハリーの簡易コンビニは、探索へと向かう生徒や休憩目的のグループから大人気を博す結果となったのだった。

「へぇ〜海京神社の地下ってこうなってたんだねぇ……まさに地下迷宮って感じで、ワクワクするよ」
 曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)が地下探索に参加した理由は『面白そう』という、単純明快なものだった。
 彼は、仄暗い通路に押し寄せる大量の巨大ネズミも意に介さず、サクサクと則天去私を叩き込んでいく。
 探索することが面白く、敵すらもワクワク度を上げる魅力の一つとしか捉えていないようだ。
 一方――
「ね、ネズミー!? あ、後で、ぜーったいにお風呂入りますからー……!!」
 瑠樹の後ろでマッピングを担当していたパートナー、マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)は、排水路を駆けて来る巨大ネズミの襲来でパニックとなり、半狂乱で則天去私を叩き込んでいた。
「いやぁ、本当にワクワクする探検だねぇ」
「あ! 瑠樹、その分かれ道は右です……って、またネズミ!? いやぁ!!」
 笑顔で地下迷宮を突き進んでいく瑠樹と、汚れが目立ちやすい色のゆる族+綺麗好き……という悪条件が重なったために半狂乱となるマティエ。
 無論、瑠樹は他の任務を軽んじているわけではないのだが、海京神社の地下迷宮は冒険者としての血がどうしても疼いてしまう場所だった。
 
 そして、瑠樹たちと同じ道を進む白砂 司(しらすな・つかさ)も――
「海京という巨大施設の普段立ち入れない場所。気になってしまうのは、男として当然だな」
 未知の領域に対して、好奇心を押さえられない様子だった
「海京は場所柄、パラミタからの落下物が多い海の上だ。フロートの底から海へ、そして海底へと抜けられるような突飛な仕掛けがもしかしたらある……かもしれんな」
 司は襲い来る巨大ネズミたちを次々と倒しつつ、地下迷宮を奥へ奥へと進んでいく。
 そんな彼の様子に、パートナーであるサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)は――
「もう! 司君だって日頃から『好奇心ネコをも殺』」って私にぶーぶー言うくせに……男の浪漫はよくわかりませんっ!」
 と、呆れて溜息を漏らしつつ、金色オーラフルバーストのネコパンチEXで巨大ネズミたちを撃破していく。
 しかし――
「でも……メガフロートの下から海底へ抜けられるかも。なんていう推論、司君の割に夢見がちだけど、私はそーゆー話大好きですよ。もちろん!」
 やはり彼女も猫である以上、好奇心を刺激する展開に心を躍らせているようだった。
「たしかに、推論だけでは夢物語かもしれないが……それが本当に夢物語なのかどうかは、行けばわかるはずだ」
 冒険者達は、それぞれの思いのままに海京神社の地下迷宮を進んでいくのだった。
 
 そんな好奇心に心躍らせる冒険者達とは対照的に――
「バルシア、前方で戦闘が起きている。援護に行くぞ」
「はい!」
 瑠樹や司たちが進むルートの後方では、ルカータン・ハルミア(るかーたん・はるみあ)とパートナーのバルシア・ティルナ(ばるしあ・てぃるな)は、冷静に地下道を進んで来ていた。
「それにしても、奥へ進むにつれてネズミの数が多くなってきたな」
「物資が少ないはずの地下にも関わらず、驚異的な繁殖力ですね……」
 ルカータンたちは神社の地下を探索するために陰鬱な地下道を進んできたのだが、先を進んでいた瑠樹や司たちの戦闘と数を増していく敵の数を見て、援護へ回るべきだと判断したのだった。
「俺は、ここから援護射撃をとる。バルシアは、接近してきた巨大ネズミを迎撃してくれ」
「了解しました。まかせてください」
 ルカータンとバルシアは襲い来る巨大ネズミたちの多さに呆れつつも、それぞれに役割を分担しすると、迅速かつ冷静に敵を排除して先頭陣を援護していった。

 多種多様な生徒たちが地下の探索を楽しむなか――
「滅びなさい、ネズミども!!」
 五十嵐 理沙(いがらし・りさ)は探索には目もくれず、破竹の勢いでネズミたちを一気に蹴散らしていく。
 彼女が海京神社の地下へやって来た理由は……巨大ネズミの駆逐目的だった。飲食店経営者である彼女は、不衛生な生物の存在が許せないのである。
「メイド喫茶のオーナーとしては、たとえ他所の事でもそんな生物に徘徊されていては虫唾が走りまくるのよ! ネズミは人類の敵っ!! 一匹残らず駆逐するわ!!」
 この世からネズミを抹殺し尽くす勢いで、飲食業界の天敵であるネズミたちを徹底的に成敗していく。
 そんな彼女の後ろからは――
「理沙ってば……冒険よりネズミの駆除に頭がいっぱいのようですわね。、まぁ悪い事ではないので、ここはあえてそのまま暴走させますか」
 パートナーのセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)が苦笑を浮かべながら理沙の援護にあたっていた。
 セレスティアが銃で中距離から巨大ネズミへ攻撃を仕掛けつつ、リロードの瞬間と弾丸を掻い潜って来た巨大ネズミは理沙がソニックブレードによって掃討していった。
 抜群のコンビネーションによって、巨大ネズミたちは瞬く間に駆除されて行くのだった。

 新入生や中堅の生徒達が黙々と地下迷宮を奥へと向かうなか、ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)は新入生のバックアップを心がけて進んでいた。
「せっかくの探検、同じスタートラインに立っている仲間達で頑張りたい気持ちがあるなら、大切にしてあげたいです。新入生さん達も力はありますし、私は探検のお手伝いをさせてもらいます」
 新入生の奮闘を優しく見守りつつ、ジーナはゆっくりと地下迷宮を進んで行く。
 しかし……そんな彼女の行動に、パートナーのガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)は――
「ジーナよ。志は解らぬでもないが、新入生達の初々しさにあてられたか、少々呑気すぎるぞ?」
 少々、ヤキモキしているようだ。
「何をもって新入生達のみで対処可能と判断し、問題発生時に割って入る機をどう読むか……判断をひとつ誤れば、皆を逃がすための盾となる機会すら叶わぬであろう」
 ジーナを少し呑気だと忠告するガイアス。
 しかし――
「え〜とっ……それじゃあ、そこはガイアスさんの判断に期待します♪」
 やはり、ジーナは新入生の活躍を見守ることが嬉しくてたまらないようだ。
 そんな嬉しそうな彼女の姿を見てガイアスは――
「ふむ。当然、助力は惜しまぬが……まったく、やはり呑気すぎるぞ!」
 結局、新入生のバックアップに加えてジーナのバックアップまで担当しなければならなくなってしまったのだった。

 一方、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)とパートナーのジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)はというと――
「はい、これで少しは明るくなった? それじゃ、どんどん行ってみようか!」
「カレン。ここから50メートル先までは我のレールガンで敵を掃討したが、罠には気をつけるのだぞ」
 二人は新入生の前に積極的に立ち、光術で道を照らしたり、迫り来る巨大ネズミの集団を排除したり……まだまだ実戦経験の少ない生徒達を守るようにして洞窟を進んでいた。
 しかし――
「なんだか、洞窟探検みたいでワクワクするね! 自分で出向いてその目で確かめるのがボクの性分だから、本当に楽しみ!」
 実は、新入生を守って奥へ進むことはカレンにとって二の次で、実際は自分自身の冒険心を満たすのが目的だったようだ。
「まったく……カレン。好奇心旺盛なのはいいが、先ばかりが気になって守りが疎かになってはならぬぞ?」
「大丈夫だって! さ、どんどん行こう♪」
 彼女達は、地下迷宮の不気味な雰囲気とは対照的に、和気藹々として奥へ奥へと進んでいくのだった。

 しかし、全ての生徒が順調に進んでいるわけではなかった。
 何人かの生徒――特に新入生たちは、迫り来る巨大ネズミの数が多すぎるため、苦戦を強いられる者も少なくはなかった。
 そこへ――
「はぁっ!」
 光の箒で飛んで来たナナ・ノルデン(なな・のるでん)は、巨大ネズミの集団に則天去私の一撃を叩き込んだ。
「みなさん、大丈夫ですか? 怪我などはしていませんか?」
 彼女としては、基本的に戦闘回避して地下迷宮を進んでいく方針だったのだが……さすがに敵の数が多すぎる上に、困っている新入生たちを見過ごせなかったようだ。
 そして更に――
「そこの新入生さんたち! ボクの後ろに下がって!!」
 ナナのパートナーであるズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が放つアシッドミストによって、新入生を苦しめていた巨大ネズミの集団は骨すらも残さずに消え去っていった。
「新入生の皆さん。迫り来る巨大ネズミは、たいした戦闘力ではありません。焦らず冷静に対処すれば、大丈夫ですからね?」
 ナナの落ちついた物腰とアドバイスは、不安の渦に巻き込まれかけていた新入生たちにとって一つの手本となるのだった。

 新入生を導く生徒たちがいる一方で、張り切りすぎて逆に失敗しているのが柊 連(ひいらぎ・れん)だった。
「さぁ、掛かって来い……って、うわ!? さすがに、この数は無理だよ!?」
 海京神社の地下を探検して、珍しいものを見つけたい! と言って地下迷宮の奥を目指していた連だったが、襲い来る巨大ネズミの数が多すぎたために苦戦を強いられていた。
「連! とりあえず、俺が光条兵器で足止めする。その間に、一旦退いて態勢を立て直そうぜ! このままじゃ、全滅しちまう!」
 そう言って、連のパートナーである白菊 輪廻(はくぎく・りんね)は光条兵器の強力な発光で巨大ネズミたちの視界を奪う。
 その隙を突いて、連たちは安全圏まで避難するのだった。
「う〜ん……なかなか、思ったようには進めないね!」
 歯がゆそうに地下の深奥を見つめる連。
 彼女たちは、すでに何回か地下迷宮を進んでは退いてを繰り返していたのだ。
 ところが――
「でも、せっかく珍しい場所を探検できる機会なんだから、諦めないよ!」
 それで挫けないところが彼女の強さだった。
 ドジッ子体質ならそれすらも、楽しもうという明るさが連にはあった。
 そのの強さもまた、新入生にとっては手本とする価値があるだろう。