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リアクション
始めに
本リアクションは、以下のようなページ構成になっております。
目的のページを探す際の目安とされてください。
戦場 1
略奪阻止 2、3
百合園看護隊 4
補給線 5
戦場/看護隊 6
麻薬農場 7、8
ハロウィン 9、10
誘拐事件 11、12、13、14
空京調査 15、16
イリヤ分校 17、18、19、20
パラ実校長 21
ドージェ 22、23、24、25、26
戦場1
教導団第一師団の本陣。
仮設の屯所にある憲兵科事務室では、多数の志願があった義勇兵を管理する仕事で大忙しだった。
教導団憲兵科の宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)は、同科大尉灰 玄豺(フゥイ・シュエンチャイ)の下で、義勇兵志願者の名簿を兵科別に整理していた。
祥子に呼ばれ、秘術科士官候補生フリッツ・ヴァンジヤード(ふりっつ・ばんじやーど)が来る。
「我が呼ばれたという事は、秘術科配属となるウィザードが決まったのだな」
「ええ。このリストよ」
祥子に渡されたリストを一瞥し、フリッツは眉をひそめる。
「随分と少ないな」
「シャンバラ大荒野各所への派遣を希望する者はまとまった数がいたのだけれど、第一師団本隊と共に行動する義勇兵部隊への志願は少ないわね。イルミンスール魔法学校から派遣された一隊がメインと言ったところよ」
フリッツは、リストに目を通しつつ言う。
「ふむ……戦場経験は無い者がほとんどのようだな」
「彼らの指導は任せたわ。きちんと組織だった魔法攻撃が実施できるまでに練り上げてちょうだい」
「心得た」
イルミンスール生徒のまとめは、フリッツに任せておけば不安は無い。祥子はそう判断して、ふたたびリストの取りまとめにかかった。
祥子は、顔見知りの生徒同士で相互監視させるため、義勇兵はなるべく学校ごとに同じ隊にまとめる編成を行なっていた。
同じ部屋ではマリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)が、シャンバラ大荒野各地に派遣する義勇兵の把握に忙しい。
第一師団と行動を共にする義勇兵には、仮の制服が貸与されるが、数の多い村落まわりの義勇兵には、各学校の制服で活動する事が求められた。
教導団の陣地や後方陣地には、村落防衛を行なう義勇兵のための補給所が置かれ、食料や地図、荒野の生活で最低限必要な物資が支給される。
マリーはそれらを義勇兵に配ってまわりながら、何か変化や気づいた事があれば、すぐに彼女や憲兵科に報告するよう指示した。
「役立つ情報を持ってきた者には、より活動しやすいよう食料等の支給をするであります」
ありていに言えば密告の奨励と、密告しやすい環境づくりなのだが。
義勇兵向けの娯楽室も設置された。
もとは教導団のカナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)は灰大尉に、義勇兵にまぎれた工作員を洗い出しやすいようギャンブル場を作るよう進言したのがきっかけだ。
風紀の乱れにつながるとギャンブルは不許可だったが、娯楽室を設置し、迂闊な発言を誘うという大枠では認められた。
娯楽室にはピンボール台やダーツが置かれ、カードなども楽しめるよう整備された。
成人以上には酒、未成年にはソフト飲料や簡単な食事も楽しめる。
その切り盛りをするのは、進言したカナリーだ。
「ようこそ! のんびりしていってね〜」
かわいらしい童女カナリーの笑顔に気を許し、口が軽くなる者も多そうだ。
だが、そこで迂闊な発言をした者は、カナリーにリストアップされ、それを元に憲兵が調査を開始するという仕組みだ。
「女性用のテントは、こちらです」
憲兵科の水渡雫(みなと・しずく)が、義勇兵としてやってきた五十嵐理沙(いがらし・りさ)を案内する。
「こっちだったんだね。案内してくれて、助かったよ」
どこに行ったらいいか困ってきょろきょろしていた理沙たちに、雫がどうしたのかと声をかけ、案内してきたのだ。
理沙に付き添うセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)が雫に礼を言う。
「ありがとうございます。わたくしたち二人とも、こうした場所は初めてですから」
雫はにっこりとほほ笑む。
「いいえ、とんでもありません。困った事や不満などあったら、遠慮なくおっしゃってくださいね」
始めての戦場で固くなっていた理沙たちも、雫の柔らかな対応に緊張が解けたようだ。
その義勇兵女性テントの外で、言いあいを始めた者がいる。
「あたしのブラシ、どこにやったのよ?!」
「だから返したって言ったでしょ!」
雫は小走りに、言い合う二人の間に入る。
「お、落ち着いてください。まずは置いた場所のまわりを探してみましょう」
そうして屋外の洗面所周辺を皆で探すと、資材箱の隙間から問題のブラシが出てくる。洗面台に置いたのが、そこに落ちただけのようだ。
それでケンカも収まり、雫はほっとする。
(やれやれ、水渡雫は面倒な事をしているなぁ)
その様子を見て、彼女のパートナーローランド・セーレーン(ろーらんど・せーれーん)は思う。
ローランドは最低限、上から言われた事をやる程度だが、雫は自分から面倒事に突っ込んでいっている。
「フム……兵としては頼りなげな見栄えも、適材適所で役に立つという訳か」
憲兵科大尉灰 玄豺(フゥイ・シュエンチャイ)はやはり遠目に、雫の様子を見て、つぶやいた。
彼は見るからに怖い顔と厳しい目つきで、義勇兵たちを見やる。
大尉の護衛を務めるセリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)は口や表には出さずに、
(自分がコワモテだという自覚はあるんですね)
と思う。
彼はグラマラスなセリエが付き従っていても、鼻の下を伸ばす素振りもない。
同僚から「あの胸に食指が動かないなんて、実は男色の趣味でも?」と揶揄されても「そのような、おぞましい趣味は無い」といつも通り不機嫌な調子で返すだけだ。
発言する一言一言に敵を作る要素を織り込まずにはいられないようだ。
灰大尉はそのように恨まれるのも仕事のうち、と公言する程なので、護衛するセリエも気を引き締めて警護にあたった。
義勇兵として名乗りをあげた瓜生コウ(うりゅう・こう)は、パンフレットなどを作り、村人からも義勇兵を募ってはどうかと提案した。
義勇兵として参加した高根沢理子(たかねざわ・りこ)が持つ魔剣の威力や、義勇兵に集まった人数について宣伝する、というものだ。
「これで士気を高めて略奪への抑止力とし、可能なら日和見している村を味方につける」
義勇兵の目付役をまとめる第一師団憲兵科大尉、灰 玄豺も、その有用性を認めた。
資金と時間の問題からにチラシになったが、各集落をまわる義勇兵に配布するようにと配られた。
なおコウが、義勇兵へのプレゼント用にと提案した、謎の青猫ゆる族こと朴ラ衛門(ぱく・らえもん)ストラップについては、予算などの問題の前にまず「かわいくないっ」という理由で不採用になった。
(哀れ、朴ラ衛門……! だが、あのイラッとくるツラじゃぁな)
この義勇兵募集チラシにより、百人単位でシャンバラ人の応募があったという。ほとんどは、すぐに前線に投入できるレベルではなかったが、輸送や労役などの任務が割り当てられた。
コウのパートナー、ベイバロン・バビロニア(べいばろん・ばびろにあ)が集まったシャンバラ人義勇兵の世話にあたった。
戦端はすでに開かれていた。
だがパラ実の部隊は、数百から数千程の部隊で散発的に攻めてくる事を繰り返した。
それは、すぐに追い散らされるも、その襲撃は次から次へと起こり、教導団と義勇兵の全体が休まる時はなかなか無かった。
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