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リアクション
斬姫刀スレイヴ・オブ・フォーチュン
朱黎明(しゅ・れいめい)は奇妙な部屋に入った。
彼は鏖殺寺院報道官ミスター・ラングレイを探していたが、鏖殺寺院の一般メンバーすら見当たらない。
そこで、物は試しと壁にいくつか伝言を残した。
「魔剣の名と運命に関して、お聞きしたい事があります」
しばらくは何事も起きなかったが、突然、目の前の廊下に矢印が浮かび上がった。
「……」
罠を警戒しつつ、それに沿って進み、辿り着いたのが、その部屋だ。
真っ暗で、壁や床がどこにあるかも分からない。入ってきた入口も、振り返ると消えていた。だが不思議と暗闇への恐怖は沸かず、部屋の中にいる人物を見る事もできた。
黎明を待っていたのは、闇に溶け込むような黒衣に黒いマント、そして顔面をおおう白い包帯の男……ミスター・ラングレイだった。
黎明は礼儀正しいが、どこか芝居気がかった礼をする。
「お招きいただき光栄です」
「こちらこそ、このような騒乱の中、わざわざ御足労いただき申し訳ない。
……お伺いの魔剣とは、どの剣の事でしょう?」
黎明は口の端で笑った。
「斬姫刀スレイヴ・オブ・フォーチュン。その名に反し、シャンバラ女王を斬ると言い伝えられる剣です」
ラングレイは何も言わない。黎明は、とうとうと続けた。
「斬姫刀という名から考えれば、剣は王女を斬るためのもの。
そして魔剣が抜かれた時に発していたという邪気。魔剣の主高根沢理子(たかねざわ・りこ)嬢によれば、それは今ダークヴァルキリーが発しているものと、よく似ているそうです。 それらの事から、ダークヴァルキリーと王女の間に何らかの関係があるのでは……と思いましてね」
ラングレイは黎明の言葉を受け、淡々と話しす。
「言葉という物は難しい。ある者にとって正しき言葉でも、別の者には嘘偽りとなりえます。
事実、シャンバラ女王は生涯、独身であり、子供もいませんでした。
しかし彼らにとり嘘偽りでも、我らにとっては正しいのです。
……そして今、古き神が新しき神話の中で悪魔と姿を変えるように、五千年間の暗き言霊は呪いとなって積み重なり、偽りを真実と変えようとしています。
もし今このまま、古王国の生み出した『運命の奴隷』の縛を解けば、この空と大地に存在する、あらゆる生命を奪うために動き出しましょう」
黎明はラングレイに笑いかけた。
「差し支えなければ、もう少し平易な言葉でお願いいたします」
「それでは御好意に甘えて、このままの口調で語らせていただきます」
差し支えがあるらしい。ラングレイはさらに言った。
「ここで語らせていただいた御礼に、貴方にひとつ依頼をさせていただきましょう」
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