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リアクション
遺跡にて・1
地下……廃墟遺跡。
新入生の訓練のために使われていたという一角が突如崩落したという報を受けて、その場に赴いたクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は、その場の状況に驚いた。
「確かに……およそ、自然な状況とは言えないな」
クレアの目の前にあるのは、はっきりとした縦穴だ。その上……
「下はすっかり閉じてるぜ。どうやら、自然な崩落じゃないな、こりゃあ」
ホバリングするおおきな鳥の背に乗って穴に潜ったクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)の報告。クレアに並んだクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)が、ふむと唸った。
「たまたま一度崩れた穴が、たまたままた埋まったということかな?」
「たまたま、か……ハンス?」
「ええ」
ハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)が、そっと地面に手を触れた。意識を集中して、その遺跡と地面に染みついた記憶を読み取ろうというのだ。並大抵の業ではない。
その間にも、クリストファー&クリスティーの報告は続く。
「……やっぱり、これは作られたものだな。隙間がない。これを単なる崩落って言うのは無茶だぜ」
「この遺跡に用意されていた機能が働いたって考えるべきかな」
「今まで確認された限りじゃあ、この下の遺跡は未探査領域だ」
「つまり、どの道がそこに通じてるのか分からない、ってこと」
「それじゃあ、いつまでかかるかわかんねーぞ。手っ取り早く行こうぜ」
と、短気そうに告げたのは新庄 ハヤト(しんじょう・はやと)。手の中の光条兵器が起動され、光を放っている。
「時間が経てば経つほど、救助は困難になるでしょう」
と、九条 紅霞(くじょう・こうか)。
「それじゃあ、早速!」
と、ハヤトが縦穴に身を躍らせる。一階層ぶんの、近くて遠いその距離を飛び降り、床……そして、この下にいる新入生たちにとっては天井に着地。
人工物らしい固い感触が靴底から帰ってくる。
「……待て!」
と、クレアの鋭い叫び。
「んだよ! 急いだ方がいいんだろう!」
「……いえ、刺激するのは危険かもしれません」
と、ハンス。
「穴を開けて彼らを救い出すのが一番の近道では?」
紅霞の問いに、ハンスはやはり首を振る。
「この遺跡には、こういった通路のつながりを変える機構が他にも存在する可能性があります」
「……ということは、遺跡を刺激することで、さらに予測のつかない変化があり得ると言うことか」
と、クレア。ハンスがサイコメトリした内容をさらに続ける。
「ええ、それに……この崩落については、その機能を起動したものがいるようです」
「! じゃあ、誰かが新入生を遺跡の中に飲み込むためにこの床を開いたってことか?」
クリストファーが驚いたように聞く。
「ええ。ですから……その何者か……おそらく、この遺跡にアクセスする権利のあるものが、意図を持って新入生の皆さんを閉じ込めたのだと思います」
「……となると、確かに遺跡を傷つけるのは危険です、マスタ。その何者かをさらに刺激して、遺跡の機能をむちゃくちゃに使われては対処しようがありません」
紅霞が、飛び降りたハヤトに告げる。
「……くそ、相手が決めたルールでやらなきゃならないってことかよ!」
悔しげに歯がみするハヤト。
「仕方ない……まずは遺跡に進入しての救助作戦を展開する。遺跡の破壊を伴う救助作戦は、最終手段だ」
クレアが告げる。
こうして、未探査領域へ、救助隊は足を踏み入れることになったのだった。
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