空京

校長室

創世の絆 第一回

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創世の絆 第一回

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遺跡にて・3

「さて、いったいどんなお宝が眠ってるのかね?」
 期待ににやりと顔をゆがめて、雨宮 湊(あめみや・みなと)が呟いた。
「やい、前に出すぎだ。他のものと足並みをそろえんか」
 と、湊の袖をつかんでニーユ・オルファリル(にーゆ・おるふぁりり)。はっと気づくと、他の探索隊よりもかなり先を進んでいた。
「……とりあえず、ここまでは安全のようね」
 と、その後を距離を開けて突いてきていたジャンヌ・ドートリッシュ(じゃんぬ・どーとりっしゅ)が呟いた。
「そりゃないだろ、人を探知機みたいに」
 思わず振り返って、湊ががっくりと肩を落とす。
「全体の安全のためには、個々の犠牲が表出することはむしろ光栄なことよ」
 と、ジャンヌ。どうやら本気で言っているらしい。
「あまりとげとげしい言い方には気をつけてください。ただでさえ誤解されやすいのだから」
 シャルル・ダルタニャン(しゃるる・だるたにゃん)が、ジャンヌを制するように言う。ぴたりとジャンヌに寄り添っているのは、どうやら彼女を守るためらしい。
「でも、宝っていってもどんなのがあるんだ?」
 彼らと同じ隊に振り分けられた玉川 直樹(たまがわ・なおき)がぽつりと呟く。
「それに、もし見付けても役に立たないものだったら……」
 ニーナ・サリファス(にーな・さりふぁす)も思案げだ。
「ギフト、だったかしら? それってどういうものなのかしら」
 ジャンヌが行き先を迷うように周囲を見回している。分かれ道だ。
 一行は足を止めた。
「機晶技術を使ったアイテムだ、って話は聞いたけど……」
「生物の姿をしている、とも聞きました」
 湊とシャルルが、ジャンヌの問いかけに交互に答える。が、それで行く先が決まるわけでもない。
「……あっ!」
 と、追いついたエッツィオ・ドラクロア(えっつぃお・どらくろあ)が声を上げた。
「ど、どうした?」
「今、向こうで何かが動いた気がします」
 じ、と目をこらすエッツィオ。不思議に映る景色の中、左右に分かれた通路をじ、っと見つめる。
「何かが動いた……?」
 直樹も通路に目を向ける。
「敵かも知れません。警戒を」
 エデッサ・ド・サヴォイア(えでっさ・どさぼいあ)が武器をいつでも構えられるようにぎゅっと握った。
「敵……」
 ごくり、と緊張で直樹ののどが鳴る。
 ……そして、じっくり一分ほどが経った。
「もしかして、敵ではないのではないか?」
 と、ニーユ。最初に飽きたらしい。
「確か、ギフトは生物の姿をしていると。……もしかしたら、ですが」
 シャルルが指を立てて、思いついたように言った。
「……あり得ます。敵対的な色は感じられませんし……」
 エッツィオも、シャルルに同意を示す。
「……よし、行ってみよう。ギフトがあれば、脱出も楽になるかも知れないぞ!」
 と、理屈をつけて走り出す湊。ひとまず罠の有無を確かめられればいいかと心中で呟いて、ジャンヌがその後を追う。
「考えてても仕方ない! 俺も行くぞ!」
 直樹も待ちきれない様子で追いかけていった。


「さあて……」
 遺跡の一角。葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、こっそりと集団から外れた。
「宝探しは冒険の華。他の人に足を引っ張られても困るし、今の内に……」
「吹雪、またですか?」
 彼女についてきたコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が声を低くして問う。どうやら、他の仲間に黙って出てきたことを気にしているようだ。
「分け前が減っても困ります。みんなが大胆な行動を控えているうちに一気に攻めるのよ」
「それは攻めるじゃなくて単独行動と言うんですよ」
 と、その背中に声がかけられた。直立不動の董 蓮華(ただす・れんげ)が、吹雪をじっと見下ろしている。
「え、えーと……」
 見つかってしまった気まずさに、吹雪の動きがぴたりと止まった。ぎぎぎと音を鳴らして振り返る。
「は、ハーイ」
「ハーイじゃない。勝手な行動は慎んでもらいたい」
 スティンガー・ホーク(すてぃんがー・ほーく)が腕を組んでいる。ああ、とコルセアが頭を抱えていた。
「……隊長、どうしますか?」
 あつかいに困った吹雪が、探索隊の隊長ヘクトルを呼ぶ。
「どう、と言われてもな。今ははっきりと探索隊を組織化してるわけじゃない。あくまで訓練の場だったから、緊急事態に対しては、自分の責任で行動してもらうしかない」
「そうですよ。だから、なんら処分を受けることはないですね」
 と、吹雪。その姿に、ヘクトルは小さく肩をすくめた。
「とはいえ、見付けたからには止めざるを得ないな。引率としては、自分から危険に飛び込もうとしている者を見過ごすことはできない」
「……やっぱり」
 コルセアが小さく呟いた。話がまとまったと見て、蓮華が吹雪の腕をつかむ。
「では、しばらく私たちの目の届くところにいてもらうわね」
「ええっ!? そ、そりゃないですよ」
「俺たちもそう思っているよ」
 スティンガーがぼそりと返す。あきらめた様子でうなだれる吹雪。
 と……
「報告する!」
 飛び込むように駆け寄ってきた桜咲 征司(おうさき・せいじ)が、ヘクトルの姿を見付けて見よう見まねの敬礼。
「……どうした?」
 ヘクトルの表情が厳しさを増す。
「この人だって単独行動してるじゃないですかー……」
 呟く吹雪。
「一応、ボクたちは報告していきましたから……」
 ルミナス・ビルガント(るみなす・びるがんと)が、頬に汗を伝わせながらフォロー。
「それで、報告って?」
 気まずさに耐えかねたコルセアが聞くと、うん、とルミナスが頷いた。
「また崩落があったみたい」
「しかも、それに巻き込まれた生徒がモンスターと交戦になっているようだ」
 二人が続けて報告。ヘクトルだけでなく、皆の表情が険しくなった。