First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last
リアクション
遺跡にて・4
「あいたたた……」
穴から落下したリュック・レイ(りゅっく・れい)が頭をさすっている。
「リュック! 大丈夫か?」
彼女の頭上の穴からレイリー・フォン(れいりー・ふぉん)が問いかける。突然空いた穴にパートナーが落下したのだから、かなり心配そうだ。
「大丈夫、罠ってわけじゃないみたい。階段になってるみたいだし、むしろ何かでふさがれてたって感じかも」
自分が落ちた場所を探りながら答えるリュック。
「そうか、今、助けるぞ」
「助けてもらわなくても、これくらい……」
と、リュックが立ち上がったとき。
「……なんか、かさかさ音が聞こえるような……」
異音を耳にした気がして、そうっと振り返る。そこにはあごが異様に発達した、アンバランスな外見のアリらしき生物。頭の部分が、胸と腹を合わせたよりも大きいのだ。
「……」
人間の頭くらいならくるみ割り機のように潰してしまえそうな大あごを開いている。うん、これはたぶん威嚇だ、とリュックの冷静な部分が告げていた。
「キャアー!」
「怪物だ! 誰か助けを!」
手近な石をアリに向かって投げつけながら、助けを呼ぶレイリー。
「おりゃあ!」
飛び込んできた見方 正義(みかた・まさよし)の刀が一閃。アリの腹を引き裂いた。アリはしばらくのたうち回った後、濁った体液をこぼしながら動きを止める。
「どんなもんだ……って……」
ガッツポーズを決めた正義が見る先。アリのすみかと化した通路から、今切り倒したばかりのアリが何体も……
何十体も……
何百体も……
現れ始めていた。
「これは……何というか……」
正義の隣でゼルダ・アーミテージ(ぜるだ・あーみてーじ)も表情を引きつらせている。
「……全部やったらあ!」
「む、無茶だよ正義!」
刀を手にアリの群れに突っ込もうとする正義を、なんとか押さえるゼルダ。
「……なるほど。このアリたちの巣になっていたのですわね。それで、縄張りに入り込んだ私たちを敵と認識したと」
「わあ!?」
二人の隣にいつの間にか現れた涼風 麻亜(すずかぜ・まあ)が分析を口にした。
「じゃあ、どうしましょうか?」
櫻井 雪亜(さくらい・ゆきあ)が、木刀を構えて問いかける。
「そうですわね……まずは、他の仲間と合流して対処すべきではないでしょうか?」
「でも、みんなが休んでるところにこれを招待するのはまずくない?」
と、リュック。
「それじゃあ、味方が来るまでは彼らの相手をしながらゆっくり後退するってことで、どうかな?」
ゼルダの提案。よし、と正義が呟いた。
「そうと決まれば、やってやる!」
正義の刀がアリたちを威嚇するように振るわれる。リュックの力ある歌に奮い立たされ、雪亜と麻亜の武器がアリのあごを叩いた。
なんとか、武器のぶんリーチでは勝っている。アリを近づけないようにしながら、レイリーの待つ階段までたどり着いた。
「みんな! 無事か!?」
救援の命を受けたジン・イザナギ(じん・いざなぎ)とカロン・イザナギ(かろん・いざなぎ)が追いついた。
「無事とは言い難いな。仲間を殺されて興奮してる」
レイリーの分析が答える。ジンはしばらく唸り、
「とにかく、戦うしかないな。誰かさらに応援を呼んでくれ! カロン、ここで食い止めるぞ」
「了解! 最初から全力でいくよ!」
二人がタイミングを合わせたように剣を抜き放つ。X字に斬られたアリが倒れるが、まだまだ敵はいる。
「……間に合ってくれよ」
仲間の援護なしでは難しそうな状況だ。
だが、さらに危険な事態が迫っていることを、彼らは知らなかった。
First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last