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リアクション
イレイザーとの戦い・3
轟音がその場を支配していた。
麻篭 由紀也(あさかご・ゆきや)が瀬田 沙耶(せた・さや)に引っ張られて、探索を続けてきた先でのことだ。
「うっわ……なんだ、あれ」
呆然と呟く由紀也。その視線の先には、触手を振り回して何人もの契約者を相手にする巨大な怪物……イレイザーの姿があった。
「ああああ、なんて混沌とした状況なのかしら!?」
と、叫ぶ沙耶がどこか喜んでいるような気もする。
「あ……あれ? お宝は?」
「……そういう感じには見えませんね」
と、伊藤 桜(いとう・さくら)とカオス・ブラック(かおす・ぶらっく)も同様、ぽかんとその事態を目にしていた。
「……だから、待てと言ったのに」
「いやー、でも、これって刺激的じゃない?」
頭を抱える様子のストリーム・レイン(すとりーむ・れいん)と、それを全く意に介していない流螺 時雨(ながら・しぐれ)も、別のルートをたどってきたのか、彼らのすぐ近くから姿を現した。
と……彼らの気配に気づいたのか、それとも戦いの最中の流れ弾か。触手の一本が吐き散らす吹雪が、手放しのシャワーノズルが暴れるような勢いで彼らへと向いた。
「あぶ……ない!」
「イレイザーの様子をうかがっていた佐倉崎 六草(さくらざき・むそう)が、はっとしたように振り返った。
「マリエル!」
「分かってますわ!」
六草が振り返りざま、銃弾を放つ。新入生に迫る触手の軌道を変える算段だ。
「いきますわよ……!」
マリエル・ティアラ(まりえる・てぃあら)が勢いよく、斧を放り投げる。斧は炎を噴き上げ、激しく触手に打ち付けられた。
「……つうっ!」
新入生たちへの直撃こそ避けられたものの、猛烈な冷気がそばを過ぎ去ったのだ。体温が一気に奪われていく。
「下がって! ちょっと、この状況は危険だねぇ」
と、呟く永井 託(ながい・たく)が、新入生たちの前に立ちはだかる。触手はそれ自体が敵を認識する機能を持っているのか、牙を剥いて襲いかかってきた。
「ちいっ……!」
触手の体当たりをかわす。いなす。かろうじて避ける。
「まずいな、これだけで……こんな、硬いとは思ってなかった!」
触手に切りつけても、ようやく傷がつくのがやっとだ。
「でも、俺たちがみんなを守らなきゃ!」
託と共に触手を挟み撃ちにする格好の那由他 行人(なゆた・ゆきと)が、刀を振り下ろしながら叫ぶ。二人がかりで、触手にまとわりつく格好だ。
「今の内に……早く!」
「ええ!」
託の叫びに頷く六草。新入生たちの元に駆け寄る。
「無理に体を動かそうとしないで。ゆっくり、こっちへ」
と、イレイザーの注意を引かないようにだろう、声を低くして告げる。
「掴まってください。さあ、こちらへ」
と、マリエラと共に広場の空間から通路へ。
「あんな化け物が……なんで?」
吹雪によって受けたダメージで震え声で、由紀也は呟いた。
「分からないわ……あまり、体力を使わないで。マリエラ、誰か助けを……」
「呼びに行く必要はありません」
騒ぎの気配を察したのだろう。ディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)によって守られながら到着した伊礼 悠(いらい・ゆう)が、素早く新入生たちの様子を確かめる。
「魔法で治癒をしますけど、消耗した体力が戻るまで無理をしないように。いいですね?」
「う……うん」
頷いて、桜は呼吸を整えることに集中する。すぐに、悠のかざした掌から暖かい光があふれ、激しく冷やされた体温を取り戻していく。
「……戦っていた人たちは?」
と、時雨が聞くと、盾を構えたディートハルトが、触手と戦う託たちを見やる。
「……なんとか、押し返しているところだ。なんということだ、二人だけでは、触手一本の相手をするのがやっとか……」
脅威に汗を浮かべながら、ディートハルトが呟く。マリエルが首を振った。
「むしろ、二人で相手している彼らをたたえるべきですわ」
「あんな化け物を倒せるつもりですの?」
と、沙耶。ひねた言葉遣いができる程度には回復したらしい。
「いや……倒す必要は、ないと思うわ」
と、六草。
「全員が脱出するまでの時間が稼げれば……あれの目的にもよりますが、倒せなくてもいいのよ」
そして、しばし。新入生たちの体力が回復するのを待って、彼らは遺跡の外へ向かったのだった。
同じように皆が脱出するまで、戦いは続く。