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リアクション
■大乱闘と光のタマゴ
そうしているうちにドージェの攻撃の回となる。
ドージェチーム6−山葉チーム8
「ギフトがボールになるなら
このギフトタマゴはボールになるべくして誕生したとしか思えないわ。
これはタマゴの運命なのよ」
日堂 真宵(にちどう・まよい)は、
鳥人型ギフトが変身した光のタマゴをボールにするのを提案していた。
「これはカレー道のエリート教育デース。
カレーなギフトとなっていただきたいデース」
アーサー・レイス(あーさー・れいす)が、
ぷちどらアヴァターラ・ライターの炎で鍋をぬるい温度で熱し、
タマゴを煮込む。
「皆の熱すぎる思いや力が叩き込まれれば
多分より強力な何かに進化するかも知れないじゃない多分」
真宵は、憶測の話を力説した。
「研究よ研究、
色んなベクトルの力をちゃんぽんしたら奇跡が起こるかも知れないじゃないの。
ええ“かもしれない”わ」
一方。
【D級四天王】猫井 又吉(ねこい・またきち)は、
キョウカクのゆる族だけの能力で、怪獣化していた。
「ドージェだからってなんだってんだ。
ビビってたまるかよ。舐めんじゃねーぞ!!」
(この戦いでドージェ相手に頑張れば、
俺も舎弟が増えて、C級四天王に昇格できるはずだ!)
巨大猫の又吉のボールを受けるのは、
パートナーの国頭 武尊(くにがみ・たける)である。
(山葉じゃねーけど、この試合でオレも限界突破を目指したい。
いつまでも、ドージェに頼ってばかりじゃダメなんだ。
頼ってばかりじゃオレ達は全く進歩しねぇ。
だから、ここでドージェに勝って限界を突破し
自分の足で先に進まねーといけねーんだよ!!)
そう考え、武尊は、
又吉の巨大ダンゴ虫型ギフトを受け止めて、
自らを高めようとしていた。
「下、上に克つ。そう下克上だ!!」
まさに、バッターボックスに立ったのは、
ドージェであった。
「ドージェ!
喰らいやがれえええええええええええええええっ!」
又吉により、巨大ダンゴ虫型ギフトが、高速で投げられ、
武尊が、それを受け止める。
「うおおおおおおおっ!!」
ドージェのフルスイングが、空を切る。
「ストライクである!」
鳥人型ギフトの審判が叫ぶ。
「もう一丁、行けええええええええええええ!!」
巨大ダンゴ虫型ギフトの2投目を、又吉が投げる。
「ぐぬああああああああっ!:
武尊が、ボロボロになりつつ、それを受ける。
ドージェのフルスイングの衝撃波が、空を飛んでいく。
2ストライク!
「これで、とどめだあああああああああああああっ!」
3球目、又吉が投げたのは、光のタマゴであった。
ドージェのバットは光のタマゴを捕え、
大きく打ち上げる。
ホームラン!
しかし。
ベースを回って三塁に到達したドージェを待ち構える者がいた。
山葉チームサードの藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)であった。
「こんにちは、ドージェさん。私とつきあって頂けませんか。
――地獄まで」
微笑みながら、愛の告白めいた発言をして、
優梨子は、覚悟を決める。
「俺は蕪之進じゃねぇ!
球場のマスコットキャラの拷屠殺禍亜(ごうとさっかあ)くんです!」
宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)が、
怪獣の着ぐるみを着て、正体を偽装しつつ、
ピッチングマシーンで優梨子の背中を撃つ。
また、両手で風銃エアリエルも撃つ。
これは、あらかじめ優梨子が指示していたことだった。
けして、優梨子がドージェから引き離されないための。
眼帯の奥、かつて傷ついたと思しき右目に向かって、
優梨子は飛びついていく。
そして、そのまま牙を突き立てる。
脳漿と魂を啜ろうと、吸精幻夜を試みたのだった。
目を狙われたドージェは、
しがみついてくる優梨子を振り払おうと、
優梨子の左脚をつかんで引っ張ろうとする。
しかし、優梨子は、あらかじめ仕込んでおいたナラカの蜘蛛糸で、
自ら左脚を切断する。
「ら、乱闘だ!」
そのまま優梨子の左脚が、観客席に飛んでくる。
「ぐおふッ!?」
のんきに缶ビールを飲んで観戦していた
白砂 司(しらすな・つかさ)の頭に、
優梨子の左脚が激突する。
「な、なななっ!?」
同じくだらしなくくつろいでビールを飲んでいたサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)が、
いきなり飛んできた脚を友人のものと認める。
「ゆ、優梨子さん!?」
「へえ、面白いことになってるじゃねえか!」
同じく、ビールを飲んで野球観戦していた、
大豆生田 華仔(まみうだ・はなこ)が、
缶を投げ捨てて、
グラウンドへ駆け出す。
「おい隆一、私らも混じるぞ!」
トミーガンを持って、華仔はさっさと走っていく。
「はぁ、オレも強制参加な訳ね……」
九 隆一(いちじく・りゅういち)がため息をつきつつ、パートナーを追う。
「おらおらおらああああああああ!!」
クロスファイアやスプレーショットで弾をばらまく華仔に対し、
隆一は、サイコキネシスで、
生身の人間にパートナーの打った弾が当たらないように努力するが。
「い、意味ねえええええええ」
サイコキネシスでどうこうできるような状況ではない。
「こうなったら、物理的になんとかするしかないようですね!」
肉食獣の瞳を輝かせつつ、
言葉だけは無駄に理性的に、
サクラコも乱闘の先頭に加わる。
こうして、めちゃくちゃのグラウンドであったが。
ドージェは、優梨子に噛みつかれたまま、
サードを蹴ってホームへと走り、
ホームランが成立する。
ぐしゃり、と音を立てて、地面に優梨子が落下する。
すぐに、血だまりができていった。
また、ドージェの右のまぶたからも、血が流れていた。
ドージェチーム7−山葉チーム8
「今のは反則カシラ。違うわヨネ?」
「うむ、これは問題ない行動であーる」
審判のキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)と、
鳥人型ギフトがジャッジを下す。
優梨子の行動は反則とはみなされない。
しかし、この段階で、試合が続けられる状況ではなく、
選手達の多くは乱闘に巻き込まれたり、それまでの試合でズタボロになっている。
治療に駆けつけた医療班の山葉 加夜(やまは・かや)を、
ドージェが制する。
「いや、いい」
小さな傷が残りそうだが、ドージェはどこか楽しそうにしていた。
こうして、試合は混乱のまま、終了となるのだった。