空京

校長室

創世の絆第二部 第二回

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創世の絆第二部 第二回

リアクション


■激闘! ドージェチームVS山葉チーム・2

試合は進み、
ドージェチーム3番バッターが登場する。

「真の漢……バンチョーになるために、
俺も勝負するぜ!」
扶桑の木付近の橋の精 一条(ふそうのきふきんのはしのせい・いちじょう)が、
ミスリルバットを持ってバッターボックスに入ろうとするが。

「ドージェいるから折角だから
『武とは……拳とは、力とは何か』とか聞きたかったけど先ずは野球やねんな!」
パートナーの瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が、
一条の両足を持って抱え上げる。
「ちょ、おま、何す……」
「地祇(ちぎ)は千切って投げるモノとかどっかの誰かも言うてたしな」
「って、投げるんじゃなく、俺をバットにしようとしてるじゃねえか!?」
「細かいこと気にすんなて!
ホームラン打ったらバット放り投げるやろ?」
「バットにした挙句、投げ捨てる気かよ!?」

「なんだか知らんが、行くぞ!」
山葉が気にせずに投球する。

「ニルヴァーナの土を持って帰るんや!」
「負けてるじゃねええええかああああああああああああああああああああああああっ!?」
裕輝が一条の身体を思いっきりぶん回して、
ハリネズミ型ギフトを迎え撃つ。

「ぐぎゅあっ!?」
うまく一条の頭に突き刺さったハリネズミ型ギフトを、
遠心力を利用して、裕輝は場外に向かって放り上げる。
かくしてハリネズミ型ギフトは左中間へ!

それを迎え撃つのは。

ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)
パストライミ・パンチェッタ(ぱすとらいみ・ぱんちぇった)の搭乗する、
プラヴァー高機動型のフレームのイコン、
フロイライン・カサブランカであった。

「来たね。
パラ実式殺禍(サッカー)でボールになることを経験したあたしは、
この程度のことでは驚かないよ!」
「ノールールかつ乱闘OKでも、イコンに乗ってれば安全ですよね」
ネージュに、副操縦席のパストライミが笑顔で答える。

「地祇に対抗するのは慣れてるよ!
飛行できるイコンなら、
全力でキャッチすれば、止められるよね!」
「ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポータラカ!」
パラ実式殺禍(サッカー)の時のように叫び声をあげて、
パストライミがネージュを支援する。

フロイライン・カサブランカが、
ハリネズミ型ギフトをキャッチする。
「ふふ、イコンだからトゲトゲの身体のギフトをキャッチしても痛くないよ!」
ネージュが勝ち誇る。

しかし。

「ぎゃあああああああああああああああああああああ」

飛んできたのはハリネズミ型ギフトだけではなかった。
次の瞬間、一条が、フロイライン・カサブランカに激突する。

「ちょ、出落ち?
イコン使ったのにあたし出落ち要因なの?
あーーーーーーーーーーーれーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポータラカ!」

パストライミが叫ぶ中、お星様になるネージュ達と一条であった。

こうして。ネージュとパストライミの犠牲により。
「ドージェチーム2アウトであーる!」
鳥人型ギフトが宣言する。

そこへ、ドージェチーム4番バッターが登場する。

「ヒャッハー!
この何の変哲も無い野球のバットでホームランを打ってやるぜ!」
吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)が、山葉にホームラン宣言する。
【C級四天王】である、竜司の舎弟達が、歓声を上げる。

「言ったな!」
山葉が、勝負球を投げ、竜司はそれを凝視する。

「ストライク!」
マウンドで山葉がニヤリと笑う。

さらに、山葉が大きなフォームで投球を行う。
しかし。
「見切ったぜ!」
竜司はこのために、1球目を見送ったのだ。

大きく打ち上がるボールに、舎弟達が喜びの声を上げる。
また、その時、観客席全体に、ホームランに対してだけではない、どよめきが起こった。

「やったな、竜司」
「ガイア!」

現れたのは、100メートルの巨体のパラ実生、ガイアであった。

「ガイア、来てくれたんだな、うれしいぜ!」
「ゴアドーのヴィムクティ回廊を抜けるのにちょっと手間取っちまったがな。
肩とか外しながら、がんばって抜けてきたんだ」
「相変わらずすげえな!
でも、それなら、月の港経由で来ればよかったんじゃねえか?」
「たしかに!」
竜司とガイアは、そろって豪快な笑い声をあげた。

「ほら、走れよ。ホームランだろ」
「おっといけねえ!」
竜司は、ガッツポーズをしながら、グラウンドを回っていった。

熱狂により、観客達が大声で竜司の名を呼ぶ。
「竜司!」
「竜司!」
「トロール!」
「トロールじゃねえ!」
そう怒鳴りつつ、竜司の顔は笑っていた。


ドージェチーム2−山葉チーム0


「ガイアが来てくれてよかった。
これで、野球もますます面白くなるね」
上永吉 蓮子(かみながよし・れんこ)が、喜ぶ竜司を見て、自分も笑顔になりつつ、
バッターボックスに入る。
「さあ、山葉、かかっておいで!」
「今度は三振だっ!」
山葉が振りかぶる瞬間。

蓮子のマインドシールドとミラージュが発動する。
ミラージュはデッドボールに備えてのものだったが。
「なにっ」
山葉を混乱させるのに役立ったようだった。

蓮子は、ヒットを打って、ファーストに進出する。

竜司の舎弟達から応援が飛ぶ。

そこで、打席に立った、6番バッターは……。

「ドージェ!」
ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が、マウンドに駆け寄る。
「私と交代しようぜ、山葉!」
「な、おいっ?」
ミューレリアが、無理やり山葉を押し出し、ピッチャー交代する。

「私は【SPB2022 三冠投手】、ミューレリア!
ドージェ、勝負だぜ!」
ボールを掲げ、ミューレリアが宣言する。
ミューレリアが用意したのは普通のボールだった。
パラ実式野球でありながら、スキルを使用していないドージェに敬意を表し、
純粋な野球で挑もうというのだった。

「フレー、フレー!
ミュー、山葉チームの皆、頑張れー!
ドージェに負けるなですー!」
戦闘時の頼もしい相棒の魔鎧、
リリウム・ホワイト(りりうむ・ほわいと)も、
今回はミューレリアに装備はされず、
応援席で皆を応援していた。

「行くぜドージェ! これが私の魂だ!」
速度が自慢の4シームジャイロボールで、
ミューレリアがドージェを打ち取らんとする。
練習の辛さ。仲間との絆。野球の楽しさ。勝利の喜び。敗北の悔しさ。
すべてが一瞬のうちにミューレリアの脳裏を駆け抜け、ボールに魂が宿る。

対するドージェは、全力で世界樹のバットを振りかぶる。

鮮やかな音が荒野に響いた。

「さすがだな」
ミューレリアは後ろを振り返らず、前だけを見つめ、ドージェに言った。

ホームに戻っていったドージェに、
ミューレリアが言う。
「いい勝負だったぜ。それと……おかえり、ドージェ」
ドージェも、どことなくうれしそうだと、ミューレリアは思った。

ドージェのホームランにより、
蓮子も先にホームに帰っている。


ドージェチーム4−山葉チーム0


ドージェチームは2アウトである。
「あとひとつ! あとひとつ!」
山葉チームから声援が飛ぶ。

ドージェチームの7番バッターが登場し、
さらに、ここで、山葉チームのピッチャー交代が再び行われる。

ミューレリアの代わりにマウンドに立ったのは。
姫宮 みこと(ひめみや・みこと)……を自走式人間大砲に詰めた、
早乙女 蘭丸(さおとめ・らんまる)であった。

「さすがドージェだねぇ……って、
その自走砲はいったい?」
バッターボックスの
永井 託(ながい・たく)の疑問に、蘭丸が答える。
「ピッチングマシーンよ!」
「あの、っていうことはつまり……」
おずおずとたずねるみことは、自分の運命を悟った。

「いずれにせよ、ヒットを打って駆け抜ければすむことだよねぇ。
僕が太刀打ちできるとしたら速さくらいかな。
全速力で駆け抜けて、あっという間に次から次へと進塁して見せるよ!」

託が気合を入れて、みことを撃つ宣言をする。

「託にぃ……。
俺だって、負けてたまるかあ!」
那由他 行人(なゆた・ゆきと)も、次のバッターとして気合を入れて控えている。

「さあ、第一球、行くわよ!
止められるものなら止めてごらんなさい!」
「あーーーーーーーーーーれーーーーーーーーーーー」
蘭丸により、ドップラー効果を発生させつつ、みことが発射される。

「うおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああ!?」
しかし、みことが激突したのは、バッターボックスの託ではなく、
行人であった。
入れていた気合いを無駄に爆発させつつ、行人が倒れる。

「これはデッドボールネ!」
「デッドボールである!」
審判のキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)と、
鳥人型ギフトが宣言する。

「こ、これで進塁だああああああああああああああああああ!!」
行人がボロボロになりつつも立ち上がり、
ファーストへと全力で走っていく。
「負けてたまるかあああああああああああああああああああ!」

そしてさらに。

「ボールはまだここにあるってことだよねぇ」
「何を言っているんですか!?
きゃああああああああああああああああああああ」
ボロボロになったみことを、さらに託が高く打ち上げて、
ファーストに向かって走る!

「行人、セカンドへ走るんだ!」
「うおおおおおおおおおおおお、
進む、進んでやる!
進塁だああああああああああああああああああああ!」
ズタボロの行人は、さらにセカンドへと向かった。

セカンドに待ち構えるのは、
【シャンバラ古王国の騎士・美しき】マリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)であった。

「守備側の時は自分の基地(ベース)を守り、
盗みに来る敵を刺して殺せばいいのね、わかったわ!」
マリザは、野球のルールを
パートナーの瓜生 コウ(うりゅう・こう)に説明されてはいたが、
一部、 勘違いしていた。

マリザが、レジェンダリーソードで、走ってきた行人を刺す。
「ぎゃああああ!?」
行人は、ばったりと倒れた。

「今のはアウトネ!」
「アウトである!」
キャンディスと鳥人型ギフトの声が重なった。

「別の意味でじゃないかなあ……」
託が呆然とつぶやいた。

ともあれ、これで、ドージェチームは3アウト、チェンジである。


1回表
ドージェチーム4−山葉チーム0