空京

校長室

創世の絆第二部 第二回

リアクション公開中!

創世の絆第二部 第二回

リアクション


■試合開始!

再廻の大地の荒野。

このだだっ広い空間で、
ドージェ・カイラス(どーじぇ・かいらす)率いるチームと、
山葉 涼司(やまは・りょうじ)率いるチームの野球対決が行われようとしていた。

「いよいよ始まるね。
三鬼、頑張るんだよ!」
魔威破魔 三二一(まいはま・みにい)が、
パートナーの浦安 三鬼(うらやす・みつき)に声をかける。
「ああ。あのドージェと野球できるんだ。気合い入れてくぜ!」
三鬼が、バットを握りしめ頷いた。

伝説の先輩ドージェ登場にテンションの上がった
三二一の呼びかけにより、大勢の人々が大荒野に詰めかけていた。

今回も百合園でお留守番している茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)のパートナー、
キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)が、
審判に立候補する。
「ミーがルールブックヨ!!」
審判は鳥人型ギフト――光のタマゴになった鳥人型ギフトの兄弟――が務める予定だったが。
「よろしい。審判が複数いても問題ないのであーる」
「では、よろしくネ。
せっかくだから、今回の野球を、
ニルヴァーナ開拓で建設中の「星立競技場」の協賛イベントにしたいワ。
建設資金を集めたりドージェにも建設を手伝ってもらいたいワネー」
キャンディスの後半の発言はガン無視して、鳥人型ギフトが言った。
「では、ドージェと山葉はジャンケンするのである」

ドージェの巨大な拳はグー。
山葉はチョキであった。

「では、勝ったドージェチームの先攻ネ!
プレイボール!」
キャンディスが試合開始を叫んだ。

ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)が、
ドージェチームのベンチにいる
マレーナ・サエフ(まれーな・さえふ)に駆け寄る。
「野球の醍醐味といったら、
ランナーや打者に送るサインだと思うんだよね。
というわけで、ドージェのパートナーであるマレーナにサインを出してほしいんだ」
「サイン、ですか?」
「そう、ただし、脳筋なパラ実生にも興味を引いてわかりやすいように、
服を脱いだ枚数で指示を出すんだ。
たとえばエプロンを取るとか、
上着を脱ぐとか、
下着姿になるとか……」
「却下ですわ」
当然のことながら、マレーナは速攻でブルタの提案を拒否した。
「これは勝利するための作戦なんだよ!
別にやましい気持ちじゃないんだ……ゲフウ!?」
ブルタはマレーナにぶっ飛ばされた。

もちろん、ブルタの目的は別にあり、
邪気眼レフと顕微眼(ナノサイト)を使用して、
マレーナの下着姿を透視し、
さらにじっくり見るためであった。

そんなパートナーを後ろに、
ステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)は、
ドージェに自分が聞きたかったことを訊ねる。

「かつてドージェはユグドラシルに向かい、
結局は待ち構えていた帝国軍と壮絶な戦いとなって辿り着けなかったことがありましたが
あの時は、いったいどんな目的でユグドラシルに向かったのでしょうか」

ステンノーラには不安があった。
(再びドージェがユグラシルを目指して動き出せば
今まで築き上げたシャンバラと帝国との同盟に亀裂が入るのではないでしょうか。
もし、そうであれば……)

しかし、野球に集中するドージェは沈黙する。
代わりに答えたのはマレーナであった。

「あの時、
ドージェ様がユグドラシルに向かったのは、
私がユグドラシルの地下にある、
ドージェ様専用イコンを取りに行っていただこうとしていたからです。
今はもう、お父さん(ゲルバッキー)が、
それを持ち出しているので、
ドージェ様に再びユグドラシルへ向かっていただく理由はありませんわ」
ドージェがユグドラシルに赴く理由はない。
そう聞いて、ステンノーラはいくらか安心した。
(それにしても……)
あの大きな戦いの裏にあった理由を知って、
ステンノーラは、再びドージェを見上げた。
ドージェが、何を考えているのかはわからなかったが、
これから始まる野球に対して高揚しているというのは伝わってきた。



「それじゃ、行くぜっ!」
ピッチャーマウンドに立ったのは山葉であった。
対する、ドージェチームの1番バッターは、
グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)である。

バットを握りしめたグレンは深呼吸した。
(俺は、弱い自分に打ち勝ってみせる……。
ドージェの前で無様な姿は見せない!)
大切な人を守れなかったことで、
過去を悔やみ、沈んでいたグレンだったが、
ドージェの姿を見て、再び戦うことを決意したのだ。

グレンのパートナーの
ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)は、
その様子を、温かい微笑で見つめていた。
(……男の人って良いですね。
言葉がなくても立ち上がれるんですから)

ソニアは、グレンに勇気を与えたドージェに、挨拶をする。
「あの時は力及ばず申し訳ありませんでした。
そして……帰ってきて下さってありがとうございます」
あの時、というのは、ドージェと龍騎士団の戦いのときのことである。
地上に帰還したドージェに、ソニアは感謝していた。

ドージェは黙ってソニアの言葉を聞いていた。
ソニアはドージェを見つめ、意を決して、ひとつ、願いを口にする。
「あの……できればグレンに何か言ってあげてもらえませんか」

「俺達は勝つ」
ただ、それだけの言葉だったが、ドージェははっきりと、そう言った。

「そうだ、俺達は……!」
その言葉を背中に受け、グレンはバットをさらに強く握る。
「行けえええええええええええええええええ!!」
雄叫びをあげながらの山葉の全力投球を、
グレンもまた、すべてを吹っ切った全力のスイングで迎え撃つ。
「……ッ!」

すがすがしい金属音が鳴り響いた。

アルマジロ型ギフトは、グレンのバットの真ん中に当たり、
大きく右中間を抜けて行った。

「ホームラン! ホームランヨ!」
「ドージェチーム、1点獲得である!」
キャンディスと鳥人型ギフトが同時に叫んだ。


ドージェチーム1−山葉チーム0