空京

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創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

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“龍頭”への総攻撃

“龍頭”への総攻撃のため、
シャンバラ国軍イコン部隊と、エリュシオンの第二龍騎士団が出撃する。

その支援を行うため、【新星】ブルツは、前線を形成する作戦を実行していた。

香取 翔子(かとり・しょうこ)
クレア・セイクリッド(くれあ・せいくりっど)が、
焔虎の赤城に搭乗し、【新星】ブルツの指揮を行う。

「各員、可能な限り、他のイコン部隊の護衛も行うのよ!」
【第四師団上級大尉】である翔子は、部下たちに命じる。
“龍頭”との激突を前に、大切なイコン部隊を消耗させるわけにはいかなかった。
ここは敵地であり、弾薬にも限りがある。
味方の輸送作戦を成功させて、前線部隊に戦闘に専念してもらうことが、
【新星】ブルツの重要な役割である。

「前方に黒い影を発見なのだ!
2、3……たくさんくるのだ!」
クレアが、翼を持った黒い獣の群れが飛来するのを確認する。

「了解。
総員、前方の敵を掃討せよ!
周囲からの増援にも注意して!」

翔子の呼びかけで、【新星】ブルツのイコン部隊と、
随伴歩兵部隊が、上空の翼を持った黒い獣を掃討する。

「雑魚たちはアサルトライフルで一掃なのだー!」
クレアがアサルトライフルを乱射する。
バズーカも装備しているが、
連射できないため、いざというときのためにとっておいているのだった。

「イコンの性能だけが
イコン戦の勝敗を決する訳ではないって証明してみせるですぅ」
サオリ・ナガオ(さおり・ながお)
パートナーの藤門 秀人(ふじかど・ひでと)は、
プラヴァー(デフォルト)に搭乗している。

「地上からも来ました」
索敵・通信システムを担当している秀人が、サオリに警告する。

「了解ですぅ。
皆さん、鍛えられた傭兵部隊の力を見せつけてあげてくださぁい!」
ドッグズ・オブ・ウォーの傭兵団に、サオリが激励を行い、
それと同時に、
銃剣付きビームアサルトライフルを空中の黒い獣に掃射する。

それを合図に、ときの声を上げ、傭兵団が地上の黒い獣たちを掃討する。

「これが、訓練された、シャンバラの軍人の力ですぅ!」
サオリが、銃剣付きビームアサルトライフルを、突き上げる。
普段はお嬢様然としたサオリも、
指揮官として、味方を鼓舞するため、
また、自らを鼓舞するためにも、率先して歴戦の強者のようにふるまっていた。

翔子の部下並びにサオリの傭兵団が、
小型の黒い獣や、たまに襲ってくる大型の黒い獣を撃破しつつ、
前線を維持する。

一方、上空では。

ゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)
枝島 幻舟(えだしま・げんしゅう)の搭乗する、
大型飛空艇ノルトと、
ハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)
川原 亜衣(かわはら・あい)の搭乗する、
機動要塞ネーデルラントが、
空の黒い獣を迎撃していた、

ハインリヒの機動要塞ネーデルラントは部隊の支援拠点でもある。

「来るぞ! 下からじゃ!」
幻舟が、目視で、大型飛空艇の下に潜り込んできた黒い獣を見て叫ぶ。
「対空戦闘用意! 支援部隊には一匹たりとも近付けないよ!」
ゴットリープが、
4門設置したガトリングガンで、弾幕射撃を浴びせる。
「ありがとう。
それにしてもレーダーに頼らないなんて」
「亀の甲より年の功じゃて。
まだまだ戦士としてのカンは衰えておらぬ。若い連中になんぞ、負ける気がせんわいッ!」
ゴットリープに、
ヴァルキリーの老戦士、幻舟が、胸を張ってみせる。

「なかなかやるじゃないか。
オレたちの要塞の力、見せてやるぜ!」
ハインリヒが、要塞砲を発射し、黒い獣の群れを一掃する。

黒い煙とともに、空中の黒い獣の群れは一掃された。
「見たか!
一匹たりとも近づかせやしないぜ!」
ハインリヒは、まだ残る黒い獣たちに宣言する。
黒い獣たちは、うなり声をあげ、さらに襲い掛かってきたが、
大型飛空艇ノルト
機動要塞ネーデルラントの攻撃の前に、次々と撃破されていった。

他方、
相沢 洋(あいざわ・ひろし)
エリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)の搭乗する
覇王・マクベスの任務は、
オットー・ツェーンリック(おっとー・つぇーんりっく)
ヘンリッタ・ツェーンリック(へんりった・つぇーんりっく)の搭乗する、
輸送用トラックランゲマルクを護衛することだ。

「素人は戦術を、玄人は戦略を、プロは兵站を語る。
この状況下で使うだろう弾薬を運んでもらうのはプロの仕事だな」
洋は、そう呟きつつ、小さく舌打ちする。
「しかし……護衛戦力がマクベス1機? 冗談じゃないぞ」
「護衛戦力をマクベス1機。ほとんど無謀ですが……以上」
エリスもあきれたように言う。
「まあ、戦力を前線にさくためにはやむを得なかったとはいえ、
この状況はな……」
そう言っている間にも、黒い獣が空中から迫ってくる。

「弾薬、燃料が詰まっているトラックだ。
最悪、マクベスの巨体を盾とする。
エリス!
ミサイル、バルカン斉射!
トラックに近づく敵を殲滅しろ!」
「弾薬と燃料……燃えそうですね。
トラックに砲弾直撃とか……以上」
物騒なことを言いつつも、エリスは任務を着々とこなす。
「敵影多数。機銃での牽制、ミサイルでの弾幕を突破。近接戦闘を」
「しょうのないやつらだ!
エリス! ディンギル発動! カナンの聖剣、抜剣! 突撃!」
「ディンギルシステム起動。
カナンの聖剣へのエネルギー装填確認。近距離に友軍機なし。発射どうぞ」
カナンの聖剣を振りかぶり、
覇王・マクベスが、
黒い獣の群れを吹き飛ばす。

「ありがとうございます。
なんとか持ちこたえてください!」
「言われなくてもわかってる!
安心して運転してくれ!」
輸送用トラックランゲマルクのオットーからの通信に、
洋が答える。
「こっちも巻き添えを喰らって大爆発なんてごめんだからな!」

こうしているうちに、一行は、
前線の補給ラインの形成を行うことに成功する。

機動要塞ネーデルラントから、
輸送用トラックランゲマルクを使って、
前線への輸送作戦が行われる。
それを支援するのが覇王・マクベスの役目だ。

「支援砲撃だけが機動要塞の役目じゃない。
補給拠点としての機能だってそれに負けないくらい重要よ」
亜衣が、自負を込めてつぶやく。

「どんな強力な機体でも、弾薬やエネルギーが切れれば単なる鉄屑と化すだけです……」
オットーも、そう言いながら、自己を鼓舞する。
ジャングルの道は走行するのに快適とはいいがたく、
トラックは揺れる。
そして、常に、黒い獣の襲撃の危険がある。
それでも、前線で戦う兵士たちのため、補給任務を行うという自負が、オットーにはあった。
「エネルギーパックの配備をお願いいたしますわ」
ヘンリッタが、通信で、
輸送用トラックランゲマルクから、
機動要塞ネーデルラントに連絡する。

こうして、【新星】ブルツの補給作戦は、黙々と実行されていった。

今のところ、前線は、このように持ちこたえられているものの、
早期の“龍頭”への攻撃を成功させ、
大勢の避難民を連れて逃げなければならない。

常に緊張した状態で、前線に立つ兵たちは、一時も気を抜けない状態であった。