空京

校長室

創世の絆第二部 第三回

リアクション公開中!

創世の絆第二部 第三回

リアクション


“龍頭”の脅威

金 鋭峰(じん・るいふぉん)団長の率いる教導団イコン部隊と、第二龍騎士団は、
アウタナの巨大な穴、“龍頭”のすぐ近くへと迫っていた。

董 蓮華(ただす・れんげ)
スティンガー・ホーク(すてぃんがー・ほーく)は、
フィーニクスの鮮紅に搭乗し、団長と羅 英照(ろー・いんざお)の搭乗する応龍の護衛を行う。

ゴオオオオオオオオオオオオオッ!

巨大な黒い獣が飛び出してくる。
大きさはイコンと同等かそれ以上ある。

「団長!
この身に変えてもお守りします!」
蓮華が、団長の応龍に迫る黒い獣の盾になろうと、鮮紅を割り込ませる。

「あちらか!」
スティンガーは、とっさに、パートナーの動きに合わせて、
敵影を捕え、ツインレーザーライフルで撃ち抜く。

ギシャアアアアアアア!

黒い獣が咆哮をあげ、墜落していく。
周りのイコン部隊が、さらに弾幕を張り、団長の機体に敵を近づけないようにする。

「ダメージはないか」
「はい、問題ありません」
「ありがとうございます!」
団長の言葉にスティンガーが答え、
蓮華は、声をかけてもらったことに礼を言う。
「よろしい」
団長は、短く答えた。

「来るぞ。ここが正念場だ!」
団長の言葉通り、さらに、巨大な穴から、
“龍頭”が噴き出してきた。

グオオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウ

地鳴りのような、咆哮のような音が、周囲に響き渡る。

「はい、団長。私は、剣と盾を、団長に捧げます!」
蓮華が宣言する。


「俺達、人間の力……見せて、やるぜぇ!!」
朝霧 垂(あさぎり・しづり)
ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)の駆る
武者ケンタウロス黒麒麟に、
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)
エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)
流星魂剛が跨り、
武者となって突撃する。
その姿は、【騎神剣帝】と呼ぶにふさわしかった。

垂は、黒麒麟の角で、“龍頭”に突撃し、
唯斗は、“龍頭”に接近した瞬間、
エクスにコックピットを開けさせた。

「羅刹解刀!
輪切りにしてやる!」
生身の身体で、羅刹の大技を繰り出し、
唯斗は、“龍頭”に攻撃する。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「くらえええええええええええええええ!!」

垂と唯斗の叫びが交錯し、
“龍頭”に二つの攻撃が同時に激突する。

グシュアアアアアアアアアアアアアアッ!!

“龍頭”は、一旦、その勢いをそがれ、穴の中に後退したかに見えた。

「やったか!?」
「な、なんだと!?」
垂と唯斗は、次の瞬間、起こったことに驚愕する。

大きなダメージを受けたはずの“龍頭”が、
再び、すごい勢いで吹き出してきたのだ。
いや、今度は先ほどよりずっと強い勢いであった。

残っていたアウタナの根が、ブチブチと切れて、
闇の力に飲み込まれ、
大地がさらに崩落していく。

「うわあああああああっ!」
「くっ……!」
「いかん、唯斗!」
武者ケンタウロス黒麒麟と、
流星魂剛が吹き飛ばされる。
エクスがとっさの判断で、コックピットから身を乗り出していたパートナーを、
機内に引きずり戻し、
唯斗は大地の底へと落ちて行かずにすんだ。

「大丈夫ですか!
すぐに回復します!」
「まさか、ここまでとはな!」
本郷 翔(ほんごう・かける)
ソール・アンヴィル(そーる・あんう゛ぃる)が、
ファーリスセネシャルズハイで、
黒麒麟魂剛に接近する。
そして、回復支援を行い、機体のダメージを回復させる。

「くそっ、だが、俺は愛する者を守らなきゃいけないんだ!」
「この程度で参ると思ったら大間違いだ!」
垂と唯斗、そしてエクスは、生身の身体にもダメージを受けていたが、
再び、“龍頭”へと挑んでいった。

他にも、“龍頭”のすさまじい攻撃で、ダメージを受けた機体が多数出てきている。

「私達は、支援を行うことで、
少しでも前線に立つ皆様のお役にたてるようにしましょう」
翔は執事らしく言い、回復支援を再開する。
「ああ。
翔も俺もあんまりイコンは使いなれてはいない。
それでも、プロのパイロットを支援することができれば、
前線の維持をできるはずだ」
ソールが、パートナーにうなずく。
医学の心得を持つソールにとって、回復をするのは本分であった。


ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)
強盗 ヘル(ごうとう・へる)の搭乗する
アルマイン・ハーミットは。
「単騎で力が足りないなら、数や知恵で攻めるまでです!」
ザカコは、“龍頭”の目や鼻のような形をしている部分に集中して、
エナジーバーストで突撃を行う。
「エネルギー体と言えど
全てが万遍無く同じ硬さではないはず……装甲の薄い部分を狙えば!」
「ずいぶん難易度の高いモグラ叩きだが、
一か八かダメで元々だとしても、
少しでも可能性があるならやってみる価値はあるぜ!」
パートナーの言葉に、ヘルも応じ、
アルマイン・ハーミットが、一気に攻め入る。

「うん、たしかにそうだね!」
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)
ミア・マハ(みあ・まは)の搭乗する
キラーラビットラーン・バディも、
スコープと心眼で狙いすまし、
ダメージ上昇を上乗せしたニンジンミサイルを発射する。

「可愛いだけじゃないんだよ!」
ラーン・バディの力、見せてくれるわ!」
レキとミアは同時に叫ぶ。

ザカコの提案した通り、
“龍頭”のくぼみのような部分……目や鼻に相当するような場所に向かって、
一斉攻撃が行われる。
「ニンジンミサイル、あるだけ撃ちこむよ!」
「レキ、黒い獣が接近しておる!」
レーダー担当のミアが警告する。
「邪魔しないで!」
ウサ耳ブレードで、ラーン・バディに接近していた黒い獣が両断される。

「さすが、百合園でも有数のエースパイロットですね。
自分達も負けていられません!」
「おう!
きっちり叩いて出てこれない様にしてやるぜ!」
ザカコとヘルも、さらに、“龍頭”への攻勢を強める。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウッッッッッ

“龍頭”の咆哮が響いた。

「まったくふざけてやがる。
これだけダメージ受けてもまだ平気なのか!?
だが、これで終わりだ!」
狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)が叫ぶ。
パートナーのグレアム・ギャラガー(ぐれあむ・ぎゃらがー)とともに搭乗する、
ストークマハカーラが、
機晶ブレード搭載型ライフルを構える。
「第三世代機の力を見せてやるぜ!
落ちろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
乱世とグレアムが覚醒し、
大きな賭けに出る。
「機晶ブレード搭載型ライフルは、そう何発も撃てねえ。だが、今なら!」
(ああ、僕は元々、生体ユニットとして生み出された存在。
代わりはいくらでもいる。
乱世の危険な賭けに乗ることに何の異存もない)

グシュワアアアアアアアアアッ!!

“龍頭”の頭部からは、黒い液体のようなものが流れ出ている。

「血……じゃなくてエネルギーか。
なんにせよ、あたいらを相手にしたこと、後悔しな!」
乱世が、不敵に口の端を吊り上げる。

ジュンコ・シラー(じゅんこ・しらー)
マリア・フローレンス(まりあ・ふろーれんす)の搭乗する
クェイルプリンセスリリィは、
援護射撃を行いながら、
ダメージを受けた味方機の回復を行う。

「大切なマリアや皆様を守れるように、
私達にできることをするだけですわ」
「ええ、味方の損傷を少しでも減らすことができれば、戦況は有利に進むはずよ」

第三世代機のような派手なことは、
第一世代機の量産機であるクェイルのプリンセスリリィにはできない。
しかし、こうして、地道な支援を重ねることで、
味方の連携がうまくいき、確実に、力となっているのだった。

「守りましょう。私達の安住の地であるパラミタを」
「ええ。これ以上、苦しむ人が出ないように」
ジュンコとマリアが、祈るように言葉を紡ぐ。
勇気を持って、前線での支援をすることで、
それは友軍の士気の向上にもつながっていく。

「龍頭……の滝、とやらが日本のニッコーにありますが、その親戚!?
龍頭があるのなら、秒針とか風防ガラスとかも出てきそうけど、滅びはゆるさないの事ネ。
時計の部品の分際で、ニンゲンを脅かす、生意気ヨ!」
ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)がボケながらも、
アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)とともに、
プラヴァー(デフォルト)のエスパーダを駆る。
「ええ、座して滅びを待つのが美しい……とかは、私にも思えないからね」
アリアンナも頷く。

「ニッコーを見ずにケッコーと言うな、ということわざもあるネ。
まだまだやりたいことたくさんあるヨ!」
「まだ生き尽くしてないからね!
滅べないんだよ!」
ロレンツォとアリアンナが、友軍が疲弊してきたのを見てとり、
最終的な攻撃を仕掛けるつもりで突撃する。
「滅びたければ自分だけ滅ぶネ。人に迷惑、これダメよ!」
銃剣付きビームアサルトライフルを、“龍頭”に突き刺す。

グシュワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

ロレンツォとアリアンナの攻撃に、
さらに、黒い液体のようなエネルギーが、“龍頭”から流れ出る。

そこに、
アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)の乗った、
ジャイアントピヨが現れた。

「ピヨ、ビームだ!」
「ピイッ!」
ジャイアントピヨが、目からビームを発射する。

「ピヨ、レーザーだ!」
「ピイイッ!」
さらに、口からレーザーが発射される。

「あの生物は……!」
「我々も負けていられないぞ!」
エリュシオンの龍騎士団も、
ジャイアントピヨの奮戦に鼓舞されたようで、
一気に“龍頭”への攻撃を行った。

同様に、巨大生物部隊も、次々と攻撃を行う。

「ふざけたこと言いやがって……」
アキラが、低い声で、呻くようにつぶやいた。
その直後、ジャイアントピヨが、
“龍頭”に向かって突撃する。

「滅びに正しいも間違ってるもあるかこのばかぁああああああ!
そんなに滅びたいのなら今ここでお前にくれてやるぅうう!
お前が勝手に一人で滅びてろこのばかぁああああ!!!」
「ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」
アキラの叫びとともに、
ジャイアントピヨの体当たりで、“龍頭”が穴の奥に押し戻される。

しかし、次の瞬間。


グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

押し返されたかと思った“龍頭”が、
巨大な咆哮をあげ、
先ほどまでとは比べ物にならない衝撃で、
周囲のイコンと巨大生物部隊は吹き飛ばされる。

「うわああああああああああああああああっ!」
「ま、まずい、ピヨが!」
ルシェイメアが、アキラに叫ぶ。
ジャイアントピヨは、闇のエネルギーをまともに受け、
大きなダメージを受けていた。

この状況に、
ファーリスに搭乗するルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)
プラヴァーに乗った馬場 正子(ばんば・しょうこ)が、顔を見合わせる。

「いけない。このままでは」
「いったん、撤退じゃ!」

「で、でもこのままじゃ……俺達はまだ戦える!」
「ピイイッ……」
アキラがジャイアントピヨとともに言い、
他の契約者達も反対する。
「ここで撤退したら、大変なことになってしまう!」

「いや」
強く言いきったのは団長だった。

「このままでは多くの味方を失うことになる。
全軍、黒い獣を食い止めながら、撤退戦を開始せよ!
結界が張られるまで持ちこたえるのだ!」