空京

校長室

創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

リアクション

 シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)もまた、イコンアカシャ・アカシュを駆って、3体のインテグラル・ビショップとの戦いに加わっていた。
 彼女が機体の操作を完全制御に設定したのは少し前のことだ。そのおかげで敵3体の動きを分析する時間ができた。その結果が、
「間違いないですね」
 『覚醒』を発動したヒポグリフに狙いを定め、3体は順にヒットアンドアウェイを仕掛けていた。
「連携してるって事?」グラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)が問う。信じられないといった面持ちが声にも表れている。
「連携と呼ぶには、だいぶぎこちないですが、間違いないでしょう。『覚醒』した機体は明らかに動きが異なりますから」
「分かってて狙ってるって事?」
「おそらくは」
 これまでの戦いの中で『覚醒』した機体がビショップの装甲を貫いた事は紛れもない事実だ。しかしそれは『覚醒』時のチャージショットでどうにか穴を空けたのであって、通常時では装甲を破ることも貫くことも叶っていない。
 『チャージ』を警戒しての事なのだろうが、なんにせよ、1体でも厄介なビショップが連携を取っているとなると……
「戦闘結果の予測をしてみたのですが。聴きますか?」
「いや……いい」
 ジト目で答えるグラルダ。そんなもの、聞かずとも分かっている。とにもかくにも、まずは3体をバラす事が先決だ。
「決めた、目標は『槍持ち』。指揮官っぽいのは天学の新型に譲ってあげるわ」
「了解しました」
 まずは脇を固める2体を掃討するべき。そう考えたのは水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)も同じだった。愛機巌島三鬼を駆り、今まさにビショップの背後を取ろうとしていた。
 狙いは槍持ちのビショップ。その背めがけて『試作型カットアウトグレネード』を放った。
 激しい爆発音が鳴る。対イコン用の手榴弾は見事に命中したが、それでも装甲と羽部の表面を僅かに割るのが精一杯だった。
「本当に頑丈ですね」
「……」鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)は言葉で答えないまま即座に、巌島三鬼に『超電磁ネット』を放つ動作に移行させた。
「次は右だ。焔の剣を振らせるな!」
 成田 樹彦(なりた・たつひこ)クルキアータ(天御柱仕様)辻永 翔(つじなが・しょう)機と共にリーダー格のビショップを挟んで猛攻を仕掛けている。3体を分断するには今が好機。
 爆煙の中から飛び出してきたビショップめがめて『超電磁ネット』を放つ。高圧電流が零距離で浴びたビショップの表情は……変わらないが元より無表情。しかしそれでも感電しているのか、動きが止まっている今のうちに一気に畳みかけてしまうが吉!
 やはり3体は互いを意識して戦っている。
 すぐに残る1体の槍持ちが援護に向かおうとしたが、アカシャ・アカシュがこれに『カナンの聖剣』と『マジックソード』の二刀で近接格闘を仕掛けて足止めに入り、これを止めた。
 一対一になれば明らかに分が悪い。しかも敵が複数になるなど死亡ルート以外の何物でもない。
 契約者たちはビショップら以上の連携をもって3体の引き離しにかかった。もしそれが失敗に終われば……全滅という未来さえ有り得てしまう……。




 イコン部隊がインテグラル・ビショップたちを引きつけている間も、ファーストクイーンらを乗せた戦艦にはスポーンやらイレイザーやらが群がり集まっていた。
 戦艦の上では山葉 涼司(やまは・りょうじ)らがスポーンを斬り伏せているが、中でも目立って躍動しているのが―――
「おジャマですよー」
 落下するように戦艦に突撃するスポーンを、イコンハマドリュアスが「闇の鎌」で刈り斬った。操縦者は土方 伊織(ひじかた・いおり)サー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)である。
「もーぅ、次から次にー」
「お嬢様、そのが来ていますよ」
「えっ、ちょっ、早いよー」
 早いも何も全方位を囲まれているのだから早いも何もないのだが。戦艦の直衛として山葉をはじめ戦艦の上で迎撃する者たちのフォローを行っていた。が、当然休む間などない。
 そしてそれは戦艦の船尾付近も同様で―――
「むーーーーーーーーーんっ!!」
 戦況は同じ。しかし常に敵に囲まれているといった状況だというのに、プラヴァーを操る白峰 澄香(しらみね・すみか)は実にイキイキとスポーンを狩っていた。
「触手を輪切りに〜、あっと、こちらは串刺し〜、距離を取るなら銃撃を〜」
「おい、澄香」パートナーのキールメス・テオライネ(きーるめす・ておらいね)が見かねて言った。
「俺たちの役割はあくまで敵の注意を引く事であって、敵を駆逐する必要はないんだぞ」
「分かってますよ〜。でも、倒せるなら倒しちゃった方が良いですよね?」
「それはそうだが。一体に固執するな。狙いを定めるならイレイザーを、スポーンを狙うなら数をこなせ」
「はぁ……。キールメス、私たちの役目は戦艦を護ることですよ、人を戦闘狂のように言うのは止めて下さい」
「おっと、論点をズラしにきたか? まぁいい。とにかく―――」
 まずは深追いを止めろと説こうとした所で通信が入った。ヘクトルの声が聞こえてくる。
戦艦の進路を変更する、援護せよ
 スポーンイレイザーの群れを振り払うため、というよりは早いうちに3体のビショップらと距離をとるべきだと判断したようだ。
 降下を続けながら、右30°の方角へ梶を切る。
「おぉおおおおお!!!」
 戦艦の行く手を遮るスポーンの群れに夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)バロウズが飛び込んだ。
「道を開けろぉ!!」
 宣戦布告と言わんばかりに『二連磁軌砲』をぶっ放す。機体は第二世代でも現役機、第三世代なんかに負ける気など、さらさら無い。スポーンはもちろん、イレイザーとだって十分まともに戦えるはず―――
「単騎でイレイザーとやりあうのは危険です。『不屈の闘志』のおかげで一撃ゲームオーバーは免れるでしょうけど」
 ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)が言う。
「なぬっ!! そんな差は無いはずだ! ようし今からそのイレイザーを相手に―――」
「あ〜、『覚醒』ができればもっと楽に戦えるのに〜」
「………………それは……」
「残念ですよね〜、でも出来ませんものね〜、天学生ではないのですから」
「ぬ………………ぬぉおおおおおおお!!!」
 やるせなさ? いやこれは純粋な怒りか。涙を呑んで、鬼神の如き迫力をもって、戦艦を背に砲口を構えた。
 己が役割は戦艦の護衛。こっちに来るやつはすべて叩き落としてやろう!
 護衛だけでは戦艦は進まない。船の行く先、進行方向を塞ぐスポーンの群壁を蹴散らす事もまた同時に必要なのだが、これがどうにも骨が折れる。
「ぐっ……くぉおお。あっ! あぁっ! こ、これっ!! メインエンジンの出力が下がってるでありますっ!!」
 フライトスターの操縦席。不慣れな機器を前にして大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)が慌てて目を剥いた。正面のメーターゲージが大きく振れている。
「これはっ!! このままではマズいのではないかっ?!!」
「大きな声を出さない!!」
 明らかに剛太郎よりも大きな声で鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)が言う。「よく見て! それはメインエンジンじゃなくて左翼部の出力ゲージでしょ!!」
「お……おぉ……そうでありますか……なるほど、それなら安心………………じゃないであります!! 落ちるでありますよっ!!」
「大袈裟ね。ただバランスがとれなくなるだけよ。最悪墜落するけど」
「やはり落ちるでありますかっ?!!」
 イコンに関しては些か無知な剛太郎は終始オロオロしっぱなしだった。見ているだけで落ち着かない。
「そうね、そろそろ補給しに戻った方が良いかもね。でも、その前に」
「なっ?!! ちょっ……まだ銃撃を続けるつもりでありますかっ?!!」
「弾が切れるまでやらないと勿体ないし、それに気持ち悪いでしょ? 後味悪いみたいな」
「いや、しかしそこまで無茶をする事はないと―――」
「無茶をしないで乗り切れるほど甘い相手じゃない。そうでしょ?」
「それは……」
 結果として戦況は未だ不利、数の上では圧倒的に不利な状況は変わっていない。しかし望美フライトスターも後先を考えて『ガトリングガン』や『ミサイルポッド』を撃ち続けてきたわけじゃない。全ては戦艦を行かせるため、戦艦が行く道をこじ開けるために無茶を承知で戦ってきたのだ。だから―――
「分かったであります……それでも完全に弾を使い切るのはダメでありますよ、味方機の所まで引き返すのにも武器は必要でありますから」
「もちろんよ。2、3発は残しておくわ」
「それだけ?!! それだけでこの機体を守れるっ?!!」
 船底部を護り、そして道を切り開く。数機がまとまって戦い、そしてエネルギーや弾が切れたなら交代で補給に戻る。
 空洞の奥から沸いてくるスポーンの数は未だ底が見えない。
 正に総力戦。超巨大空洞降下作戦はまだまだ道半ばのようだ。