空京

校長室

創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

リアクション

 超巨大空洞。その底部から沸いてくるイレイザー・スポーンの群れが空洞の外にまで溢れ始めてから半刻。
 ファーストクイーンらを乗せた戦艦はとっくの昔に空洞内に入りたというのに、今もスポーンらが外輪部に群れ留まっているのは、ドージェ・カイラス(どーじぇ・かいらす)の闘気に当てられているのか、それとも恐れているからか。どちらにせよ―――
 戦場に響くはクエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)の歌声。操縦席で奏でる生歌をアルテミスのスピーカーを通して周囲に流していた。状況に応じて歌い分けているが、味方の力が沸くように、そしてインテグラルらが力を発揮しづらくなるならばと願い、歌い続けているのだった。
 そんなアルテミスも、
「ふっ!!」
 サイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)に操縦によって、飛びかかってきたスポーンの額を『機龍の爪』で突き刺して、そのまま頭部を裂いていた。
「おや、ずいぶんと脆いな」
 切口に『イコン用光条サーベル』を抉りこんで体組織を離断しようと考えていたのだが、『機龍の爪』でも容易に裂けてしまった。相手がスポーンという事もあるが、拡声器の役割だけではない事を十分に証明してみせたようだ。
「まったく……」
 薄く目を閉じて周囲を見渡す。毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)は『ディメンションサイト』を駆使してイレイザーの触手をどうにか避けていた。
「精神統一をするなら他の場所でも良かろうて」
「そう、だねっ!!」
 パートナーのプリムローズ・アレックス(ぷりむろーず・あれっくす)も同意のようだ。彼女は『一刀両断』で豪快に触手を斬り落としていた。
「まぁでもそれも含めてらしいっていうかさ、可愛げがあるじゃん?」
「……可愛げ、ねぇ」
 一ミリもピンとこなかったが、まぁ「守ってやるよ」という思いは今も変わっていない。決して認めたくはないが、彼に魅かれている部分は少なからずあるのかもしれない。
「で? 肝心のドージェは?」
 目を向けて、少し安心した。あぐらをかいて座る彼の周りにはマレーナ・サエフ(まれーな・さえふ)関羽・雲長(かんう・うんちょう)も居る。関羽が居るのは今もまだ信じられないのだが……心強いことは間違いない。
「動かないでいて下さい」セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)ドージェの傍らに立って言った。
「……ま、言わずとも、動かないと思いますが」
 そう呟いて彼に『※サクロサンクト』を唱えた。今日だけは守るべきエリアをドージェ一人に限定させてもらう。
ドージェ様、私やパラ実の皆が貴方を必要としています。ですから全部終わらせて、必ず生きて帰りましょう」
 どれほどの数で押し掛けようとも、必ず自分が守ってみせる。群れ迫るスポーンなど、全て自分が片づけてみせる!
 敵を挑発し、攻撃を自分に向けさせる事ができる『プロボーク』をセシルが発動した時だった―――
「危ないっ!!」
 幸田 恋(こうだ・れん)の叫ぶ声。『【オーダリーアウェイク】マホロバ人用』で鬼人化していたからこそそれに気付くことができたようで、巨大な物体が高速でセシルめがけて飛び来ていた。
「くっ……」
 間一髪、セシルを抱いて逃れた。飛び来た物体は二人のすぐ横をかすめ、地面を抉って制止した。驚くべきことにそれ焔の剣を持つインテグラル・ビショップだった。
「あれは……」
ドージェ様っ!!」
 膝をつき、立ち上がろうとするビショップの眼前にドージェが座っている。共に強大な力を持つ者同士、互いの力量もすぐに測れることだろう。
 両者の視線がぶつかる。それでもドージェは立ち上がらない。眉一つ動かすことなく精神統一の姿勢をとり続けた。
「……微動だにしないのは……実に立派だ……」
 マレーナが動くよりも前にグレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)が呟き、そして飛び出した。「あんたに何かあると……マレーナが無茶をしかねないんだよ」
 『光学迷彩』で姿を消しているので不意打ちは容易だった。『曙光銃エルドリッジ』でビショップの目を狙い撃ちにした。
 眼球を狙ったというのにビショップは数回まばたきをしただけで、すぐに眼光鋭く周囲を見回し始めた。パートナーのソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)も『サイドワインダー』を放っていたが、ビクともせず。逆に次のターゲットとしてその目に捉えられてしまっていた。
「……とにかく離れるぞ」グレンは『光学迷彩』を解いて言った。ソニアマレーナの傍を離れないだろうが、それならそれで構わない。ドージェマレーナ、両方のリスクを下げる事ができる。
 ビショップが宙に浮かび上がったとき、辻永 翔(つじなが・しょう)をはじめ、これまでビショップと戦っていた契約者とそのイコンたちが上空に現れた。辻永機のチャージショットによって吹き飛んだビショップを追ってきたのだそうだ。
「ほらよ」
 上空が賑やかになるのを尻目に姫宮 和希(ひめみや・かずき)ドージェの傍らに『“龍騎士”の欠片』を置いた。
「どうせまた「要らない」って言うんだろうけどよ、とりあえずここに置いとくぜ」
 吉井 ゲルバッキー(よしい・げるばっきー)が造ったドージェ専用機。にも関わらずドージェ自ら破壊したイコン、その欠片である。すでにイコンの形すら成していないが、それでも―――
「専用っていうからには何か力を引き出せたり、適合するものがあるって事だろ。そいつが何なのかは俺も知らねぇけどな」
和希」パートナーのガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)が急かすように言った。早くマレーナの護衛に向かいたいのだろう。マレーナはすでに足を止めてビショップの正面に立っている。やはり逃げ続けるなんて事はしないようだ。
 そんなマレーナを追う者がもう一人―――
「おっぱいが無ぇなあ!! おっぱいがぁ!!」
 品のないセリフを堂々と叫んだ後にキング・王・ゲブー喪悲漢がしゃしゃり出てきてビショップの前に仁王立った。
「やぃやぃやぃや、インテグラル・ビショップ! マレーナのおっぱいは渡さねぇぞ! おまえがどんなにしゃぶりたくてもなぁ! マレーナのおっぱいだけは渡さねぇ!!」
「いいぞ兄貴ー!! かっこいー!!」バーバーモヒカン シャンバラ大荒野店(ばーばーもひかん・しゃんばらだいこうやてん)の声援にゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)は更に気を良くして―――
「おっぱいが無ぇ奴に! おっぱいは渡さねぇ! だから俺達は、てめぇを倒す―――ってアレっ?!!」
 最後の雄叫びを上げる前にビショップの剣がキング・王・ゲブー喪悲漢の鋼鉄モヒカンをスパッと横切りに……そしてマレーナの蹴りがイコンの左膝部をバッキリ折っていた。
「えぇっ!! ちょっ!! マレーナっ?!!」
「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい五月蠅いですわっ!!」
 そんなに言ってない……なんてツッコミが届くはずもなく。乙女の怒りを買ったばっかりに、出撃したばかりの所でキング・王・ゲブー喪悲漢は膝から崩れ落ちた。
 これが口火となり、再び契約者たちとビショップとの戦いが始まった。虚しくもキング・王・ゲブー喪悲漢の頭部である巨大なカボチャランタンが戦場に転がり続ける事になるのだが、悲しいことにこれ以降、誰かもイジられる事はなかったそうだ。