空京

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創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

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戦艦の攻防戦

 エルサーラと和輝の情報を元に、戦艦は小規模戦ですみそうなルートを選び、着実に王宮に向けて進んでいた。戦艦がとりそうな進路を複数選択し、囮部隊も交えて複数の進路をイコン部隊と地上部隊が先行して進む。隠すわけにいかない戦艦の行く手に、敵の大部隊を招かないための苦肉の策である。幸い個々のイレイザーたちはさほど知性があるわけではないようなので、この方法でもうまくいきそうだった。都市の設計がきちんとなされていたのだろう、ビルの間のメインとなる道は、作業用のイコンなどが動けるようスペースが十分にとってある。風などの影響を最低限にするためだろう、道は微妙に位置をずらして配置してあり、どの通路にいても、すべての道から素通しにならない形になっている。建物を盾に隠れて進める利点はある。だがそれは敵とて同じことが言える。
「まずはルークのところまで、隊を無事届けないとな」
 ストークエクスクレーエのコクピットで瀬乃 和深(せの・かずみ)が呟いた。瀬乃 月琥(せの・つきこ)はサブパイロット席で緊張の面持ちで待機している。そこにビルの谷間から出て所属するイコン部隊内で組となった索敵要員、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)から通信が入る。
「こちらアルシェリア。2時の方角にイレイザー5体を確認」
「了解! ……3時の方向にも7体確認され、同部隊のメンバーが駆逐に向かった模様!」
月琥が別途届いた通信を確認して呼びかけた。
「そうするとこっちは俺らだけで対処ってことだな。覚醒は使えるから5体ならどうにかなりそうだが……」
和深が唸った。アルシェリアのアルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)が声をかけてくる。
「チャンスがいるってことですよね? でしたら私達が機動力を生かして、ロングレンジライフルで先制攻撃をしてみます」
「敵を翻弄してやればこっちに気をとられて、スキができるかもってことだよねぇ。
 機動能力の高いのアルシェリアにぴったりの役割だよ。アルトリアちゃん、よろしくです 」
「多数のイレイザーを相手にすることになりますから、十分注意して行きましょう!」
アルシェリアはビル群を抜け、高く舞い上がった。レーダーの敵影を確認し、戦艦や他のイコンの邪魔にならない方向をあらかじめ確認する。
「イレイザーの注意ををこちらに引き付けられれば、作戦の成功率が上がりますねぇ」
「気合いを入れすぎて空回りしないように、細心の注意を払わないと。
 アルシェリアが落とされることのないように十分注意しましょう」
勢い込むルーシェリアにアルトリアが釘をさす。攻撃の届くぎりぎりの距離からロングレンジライフルで慎重にイレイザーの群の中心固体の頭を狙う。重力加速度が加わった弾丸は、イレイザーからかなりの量の肉を剥ぎ取った。すさまじい咆哮が上がる。アルシェリアは数発続けてイレイザーたちに弾丸を見舞うと、先ほど当たりをつけていた地点――もちろん和深らに座標連絡済である――に向けて高速で機体を奔らせる。あたかも思ったより遠隔攻撃が長引き、敵に見つかったのを振り切ろうとするような挙動を含ませ、獲物を待つエクスクレーエのあぎとへと向かう。
「兄さん、来たよっ!」
月琥が低く叫んだ。
「よし、覚醒を使って一気にしとめる。十分敵が接近して、固まったところで一気に突っ込む!」
コンソールの上を和深の指がすばやく動く。
「了解ッ!! 距離700……600……」
月琥のカウントダウンにかぶさって、和深が覚醒の光を見たら即急上昇するようにアルシェリアに連絡する。
「間違ってもあんたたちまで巻き込みたくないからな」
「了解」
ルーシェリアとアルトリアが同時に応じた。
「500……400……」
「よし、覚醒ッ!!」
ストークの機体が機晶エネルギーの淡い光をまとい、身を潜めていたビルの陰から一気に舞い上がった。アルシェリアを追ってきていたイレイザーたちは、突如現れた輝くイコンに不意をつかれ、戸惑い、その間が命取りとなった。
 ウィンドシールドを纏い、上昇しながら覚醒エネルギーを秘めた機晶ブレード搭載型ライフルの弾丸を撃ち込むと、2体のイレイザーの首と頭部は吹き飛ばされ、残った胴体は全身を引きつらせて落下してゆく。残る3体は輝く機晶ブレードに切り裂かれ、ばらばらになった体のパーツが仲間の後を追った。

 けん制攻撃は無論、戦艦の本進路上でも展開していた。ジェニー・バール(じぇにー・ばーる)の大型飛空艇ル・アンタレス号が、本隊に先駆けて他の駆逐艦とともに扇状に展開し、前方のイレイザー群に間断なく砲撃支援を行っていた。
「片舷斉射っ!! 補給を切らすな! 撃って撃って撃ちまくれっ!!!」
ジェニーが叫ぶ。覚醒イコンのような一撃必殺の攻撃力はないが、広範囲に広がるタイプの弾頭、それも戦艦同士の戦闘で使うタイプを多数ばら撒けば、イレイザーを速やかに接近させない程度の威力は十分にある。
「過去に栄華を極めた都って言うからよ、ちょっとお宝探しに降りてみたんだが……しけてやがるな。
 目ぼしい物はたいしてなかったぞ」
ジェニーの先祖であり英霊のパートナー、ジャン・バール(じゃん・ばーる)が指揮に忙しいジェニーに向かってぼやいた。やや肥満気味の体をブリッジのカベにもたれさせ、ため息をつく。それでもいくつか宝飾品などを手に入れてきたものらしい。
「……さっきから見かけないと思ったら……何やってんだか」
「遺棄された都市だぜ? しかも文明も違うとくりゃあ、掘り出しもんがあればと思うのが海賊の性だろ。
 あさっても何のお咎めもねぇしよ?」
「ジャン、見りゃわかるだろうがこっちは忙しいんだよ。遊んでた分はきっちり働いてもらおうじゃないか」
「おうよ」
「右舷の警戒を頼んだよ」
ジャンはすぐにきびすを返し、わかったという合図に片手をひらひらさせて立ち去った。
 けん制攻撃はかなり有効で大半のイレイザーを戦艦に近寄らせずにすんでいた。ただ、さすがに大型のものはいないが、それでも建物内部から突如現れて不意打ちをかけてくるイレイザーもいないではない。戦艦に近づくイレイザーを、端守 秋穂(はなもり・あいお)のジェファルコンセレナイトが遊撃する。陽動の可能性も鑑みて、常に相手取る敵だけでなく、母艦方向での敵の動きがないかも抜かりなくチェックしている。
「ファーストクイーンさん達は、覚悟を決めてここまで来てるんです……僕達もそれに応えなきゃ!」
秋穂が呟く。通信手でありセレナイトのコントロール、リサーチを行っていたユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)が呼びかける。
「ジェニーさんから通信だよー。大きいイレイザーが10体、弾幕をくぐって接近中だってー。
 そのうち一匹がこっちに向かってきてる。んでね、下のほうから……2匹小さいのだけど、飛び上がってきてる」
「何だって?」
戦艦のほぼ真下のビルから、2匹の小型の飛行型イレイザーが舞い上がってきているのが目視できた。一方のレーダーには高速で接近してくる白い点が正面に1、残りが左右に展開しているさまが写っている。ユメミがすぐさまカメラを切り替え、サブスクリーンに正面のそれを映し出す。被弾したためあちこちを多少損傷してはいるものの、大型の飛行型イレイザーがまっすぐにこちらを目指して接近してくる様子が映し出された。
「まずいな……」
「双方の交錯時間が、2分後と予想されてるよ。いっぺんに3匹……」
「ほかの艦は左右に展開してる?」
「うん、すぐ応戦に向かったって」
「やむをえないな。僕たちだけでこの3体を始末しないと。覚醒を使う。僕達の全力で、戦艦を守るっ!」
セレナイトが淡い光を帯びた。マジックカノンの連続砲撃が下方から上がってくる小型の個体を狙い撃つ。覚醒のパワーと、敵が小型であったのも幸いし、あっけないほど簡単に2体のイレイザーはビルの谷間に落下していった。その結果を完全に見ないうちに、セレナイトは正面突破してきた大型イレイザーに向き直った。敵の巨大な口から毒炎が噴出する。ユメミの指が忙しく操作卓を駆けると、機体はインメルマン・ターンの優美な曲線を描き、敵の頭上へ移動する。秋穂がすかさずビームサーベルにパワーを注ぎ込み、敵の首に向かって打ち下ろした。切り落とすにはいたらなかったものの、延髄をやられたイレイザーは全身を痙攣させた。
「このままだと戦艦のブリッジに衝突しちゃう……」
「体当たりで進路を変えるよっ!」
セレナイトはまっすぐに瀕死のイレイザーに向かって突っ込んでいき、その巨体を覚醒エネルギーの最後の力を振り絞って戦艦から逸らすことに成功した。