空京

リアクション

エピローグ２

北ニルヴァーナの巨大空洞において、
契約者たちは、ファーストクイーンを王都へ運び、
インテグラルの制御装置である“王”に接触させることに成功する。

そのため、空洞内と付近のインテグラル、イレイザーは、
ゲルバッキーの制御下へと入ったのだった。

ニルヴァーナ大陸を支える巨人族の神イアペトスと同化していた“滅びを望むもの”は、
インテグラルの制御権を取り返すべく、地表へと、その現身を送り込み始めた。

これを受け、強敵との戦いを望む最強の契約者ドージェ・カイラスは歓喜し、
その本能のまま、“滅びを望むもの”との戦いを開始した。

ドージェがこの戦いに勝てば、“滅びを望むもの”は消滅する。

しかし――
イアペトスと同化している“滅びを望むもの”が消滅すれば、
ニルヴァーナ大陸は崩壊し、その全てが失われてしまうのだという。

かつて、最愛の者を奪われた復讐のため、
大陸と引き換えにでも“滅びを望むもの”を消滅させたいと考えるゲルバッキーは、
ドージェを止めようとする可能性のある者を排除すべく、
支配下に置いたインテグラルによって契約者たちを攻撃し始めた。


インテグラルらとの戦闘に疲弊していた契約者たちは、
南ニルヴァーナまでの撤退を余儀なくされる。


ドージェと“滅びを望むもの”との戦闘は幾日も途切れなく続いており、
その衝撃は、ニルヴァーナ大陸に不定期な地震をもたらし続けていた……。

一方、王都の地下研究所へと向かったアラムらは
ゲルバッキーに対抗するための手段を持ち帰って来たようだった。


■

パラミタ大陸では、“滅びを望むもの”の一部である
巨大な負のエネルギーの塊“龍頭”が、シボラの穴から、パラミタ大陸の地表へと姿を現していた。

“龍頭”を押さえるために総攻撃を仕掛けていたイコン部隊と
助けられるだけの避難民を乗せた大型飛空挺団は、衝撃により吹き飛ばされたものの、
かろうじて東カナンに不時着することになる。

衝撃は、なんとか間に合ったエリザベートらによる結界によって押さえられてはいるが、
それもいつまで持つかは分からなかった。

一方、世界樹アウタナは、
四方より生やした逞しい根を４本の脚のように扱い、シボラの大地に“立っていた”。
それは、古代シボラに渡った契約者たちが、古代のアウタナへと植樹した『世界樹の苗木』が育ったものだった。
その根を使い、穴から這い出てきたのだ。

そして、脚の上に伸びるアウタナ本体は、
複数の世界樹が絡み合い、融合した、一本の世界樹として新生していた。

また、シボラの国家神であり、アウタナと融合し化石化していたアテムも、
古代シボラに渡った契約者たちの言を受け、自身の全盛期の力をこの時代まで溜め続けていたのだった。



シボラの大穴から地表へと姿を現した巨大な“龍頭”からは“黒い獣”が溢れ続け、
また、エリザベートらによって張られた結界は、軋みをあげていた。


■

地球、小笠原沖――


「……パラミタ大陸が、崩れようとしている……？」


航行中の客船のウェイターのアルバイトをしていたジークリンデは、
窓の向こうに見えた浮遊大陸パラミタの端が、ほろほろと崩れ始めようとしている様を見ていた。



やがて、環太平洋地域の諸国はパラミタ大陸崩壊に備え、
緊急事態宣言を行うこととなる。