空京

校長室

創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

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市街ルートを確保せよ
 
 戦艦の進路確保に契約者たちが動いている中、市街部では戦艦への不意打ちの阻止と、夏來 香菜(なつき・かな)を攫ったウゲン・カイラス(うげん・かいらす)を追うキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)と協力者たちの行く手を安全にするための二重の目的で、上空から発見しづらい位置に潜む小型のイレイザーやスポーンなどを駆逐すべく歩兵、陸上型イコン部隊も動いていた。
 最前線に近い位置では、大豆生田 華仔(まみうだ・はなこ)が目に付く動くもの全てにトミーガンを乱射し続けていた。イレイザーには豆鉄砲のようなものだが、王宮から比較的近いこのあたりは商業区だったようで建物が込み合っているため、彼女の攻撃はスポーン部隊に対しては効果を挙げていた。
「おらぁぁ! 全員ぶっ飛ばしてやるぜぇぇぇ!!」
崩れかけた建物の影から現れたスポーンに向かい、銃を乱射する。黒い霧となって消し飛ぶスポーン。
九 隆一(いちじく・りゅういち)は弾薬補給をしながら、そんなパートナーを多少不安げな面持ちで見つめていた。
(本人に自覚はないんだけどさ……ハナってトリガーハッピーの気があるよな……。
 今はまぁ、スポーン相手だけだから良いんだけどさ……)
実際この場所にいたる彼らの進んできた道のりに、生きたスポーンは残っていないといってよかった。華仔の後方、隆一の斜め後ろの建物から、二人の人影が走り出てきた。地上部隊のサポートとして救護活動をしている姫宮 みこと(ひめみや・みこと)と、そのパートナー本能寺 揚羽(ほんのうじ・あげは)である。
「救護のものです! それと多少ですが補給物資も持ってきました!」
みことが声をかけてきた。
「おー、ありがとさん!」
隆一が声をかけたとたん、華仔がギッと振り返る。
「敵か? フフフ、ハハハハハハ……獲物だな?」
「うわっ、ちょ、まずいよ……ハナ? ……おーーーーい、ハナちゃーん?」
華仔は迷わず、呆然と立ちすくむみことと揚羽に向けてトミーガンを撃ち込んできた。その動きを予想していた隆一は、弾丸の全てをサイコキネシスで逸らしながら、精神感応で呼びかけてみる。
『おーいってば……この人たちは味方だってばよ。おい?』
「詳しいことは知ったこっちゃねぇし、興味ねーしどうでもいいんだよ!
 とにかく敵をぶっ飛ばじゃいいんだろ隆一? この場にいるやつ全員ぶっ飛ばしてやるさ!!」
みことはその場から動けず、揚羽は万一を考えひたすらエンデュア、スウェー、ガードラインを作動させ、その場にうずくまるみことと自分の保護に専念することにした。危険な場をかいくぐってきたこともあり、サイコキネシスで弾丸が逸らされ続けているとはいえ、自分たちに向けて乱射される弾丸の雨の中で平常心でいられる人間はそうはいないだろう。隆一はそちらをチラッと見て声をかける。
「ハーナーちゃーん。聞こえますかー? 銃撃つのちょっとやめてー?
 ……あー、ダメだありゃ。全然話聞いてねーなぁ。
 んー……しょうがない……ちょーっとばっかり眠ってもらった方がいいかなぁ?」
「隆一いいいぃ! 黙ってろぉおおお、邪魔するんじゃねぇえええ!!」
「はぁ…あんましこーいう事はしたくないんだけどなぁ。悪いな、ハナ。……おやすみ」
隆一はヒプノシスを華仔に向かって最大威力で放った。その場にガクリと崩れ落ちる華仔。
「すまんね」
「……い、いえ」
引きつった笑顔でみことが応じる。
「後方支援も重要という意見、認めぬわけにもいかぬとついてきたが……。
 よもや味方からの誤射に守りを固めるとは思わなんだぞ」
揚羽がこぼす。
「ま。まあほら、こういう時って、強いストレスからお加減が悪くなる方もいるんですよ……」
みことが言って、背筋を伸ばす。
「まぁ、一種の状態異常ともいえるかも知れぬが」
揚羽の口調はまだ硬い。
「とりあえず、しばらく目を覚まさないように、鎮静剤でも打ってやってくれるか?」
「もちろんです!」
みことが言って、措置をとる。
「安全そうなところに退避しておくがよい」
そこにキロスと数名の契約者たちが駆けつけてきた。
「ウゲンを見なかったか?」
キロスが問いかける。
「いや。見てないな……」
隆一が言い、みことと揚羽も首を横に振る。そこに小型のイレイザーが2体、空中から舞い降りてきた。キロスが剣を構え、戦闘態勢をとる。
「くそっ! こんなときにッ……!」
キロスに付き従ってきたメンバーの後方から最新鋭の第三世代機ストークが一機飛び出してきた。魔装騎士ディアナだ。外部スピーカーからドクター・ハデス(どくたー・はです)の口上が流れてくる。
「フハハハ!我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス!
 ククク、『モテないイケメン』の次は『駄目な弟』か!
 貴様にお似合いの称号だな、キロス・コンモドゥス!」
キロスは目をむき、ハデス機に向き直る。
「何だと?! テメェ……」
外部スピーカーから、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)の抗議する声がさらにかぶさる。
「キロスさんは『駄目な弟』なんかじゃありません! ま、まあ、駄目な人で放っておけない感じですけどっ!」
アルテミスは必死でフォローしている様子だが、実際はフォローにも何もなっていない。ストークは軽々とキロスの上を跳び越し、イレイザー2体の前に立ちふさがった。新式ダブルビームサーベルを振り回し、一体のイレイザーから飛んできた触手を切り落とす。毒炎を吹きかけようとしたもう一体の顎にアッパーカットを叩き込み、炎を逸らしながら叫ぶ。
「ふん、あの夏來香菜とかいう小娘がどうなるか気になるのであろう? 
 この雑魚イレイザーはこの俺に任せて先にいくがいい!
 小娘がいなくて落ち込んでいるキロスでは、イジり甲斐がないからな!」
「と、とにかく、キロスさんは早く夏來さんを追って下さい! ここは私たちが食い止めます!」
アルテミスがハデスに負けまいと叫ぶ。ビームサーベルが触手を失ったイレイザーの片翼を捉え、切り落とした。キロスは唇を噛んで怒りを抑えていたが、ここはとにかく香菜の元へと急ぐのが先だ。
「……仕方ねえ。ここは頼んだ」
聞こえないほど低い声で言うと、イレイザーと戦うハデス機をあとにする。
「ククク、小娘を助けて、せいぜい甘えるんだな!」
ハデスの哄笑があとを追う。
「くそッ!! いい気になりやがって!!」
ウゲンに対するキロスの怒りはさらに高まった。いささか八つ当たりの要素も含まれてはいたが。
「本当に、これでいいのか、アルテミスよ?」
一体を屠り、もう一体のイレイザーに向き直りながらハデスはアルテミスに問うた。アルテミスがうなずくのを目端に捉えたハデスは戦闘に集中する。だが、アルテミスは補佐作業を行いながらも、その表情は複雑だった。
(……キロスさんが目的を果たせるようにお助けしたのに……なんでしょう、この胸のもやもやは。
 何故か……私……キロスさんに行って欲しくないような気が……)