空京

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創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

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古代シボラ2

「未来のため、シボラのため、パラミタのため……伝えなきゃいけない想いがある……」
 レオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)は、彼女の信じる現代の最終兵器を古代シボラへ伝えんとしていた。
 木材を重ね、草を編んで出来たアテムの住居にて。
「レオーナ様……レオーナ様……わたくしには何がなんだか分かりません」
 恥ずかしそうに半泣きのクレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)はメイド服を着用させられており、その足にはニーソックスが完備されていた。
 レオーナはスクール水着を着ている。
「伝えたい想いって、これで良いんですか……? ううう」
「俺もサッパリ分からん」
 ヤンキー座りで二人を見上げるアテムが真剣な表情で首をかしげる。
 レオーナはパンっと腰に手を当て二人を見下ろした。
「分からない?
 この格好、このカルチャーであなただけでなく世界樹アウタナまでびんびん間違いなし!
 そして、この文化が広がり、発達すれば、やがて硬度と長さを増して現代のアウタナを救うに違いないわ」
「何の硬度と長さが増すんだよ?」
「男性限定で」
「レオーナ様……ううう」
 クレアは心の何かが崩れるように、泣き崩れたようだった。
「アウタナも立派にびんびん硬い根を張るはず――
 この古代シボラ……そしてアウタナは……私が変えてみせる!!」
 そう熱く拳を握ったスクール水着姿のレオーナだった。

 一方で、
「やっぱりなァ」
 南 鮪(みなみ・まぐろ)はアテムの格好を見て、確信を得ていた。
 
 ――何故アウタナが沈んでしまったのか――

「それは、“根っこの大切な所”がしっかり保護されてなかったからだぜ!
 俺は今おまえを見て、そう確信に至ったぜ。アテム」
「どういった意味だ?」
 アテムが興味深そうに鮪を見やる。
 鮪は真っ直ぐにアテムの腰ミノを指差してやった。
「そこにパンツが無い。それが全てだぜ」
 ぶふっ、と吹いたのはクレアだった。
「パンツは関係ないと思うのですが……?」
「いや、ある。
 アウタナの根っこの大切な所を古代から愛溢れるパンツでがっちりフォローしておけば、変なエネルギーもオムツの前のお漏らし同然!」
「アウタナの変なエネルギーって一体……」
 クレアの呻き虚しく鮪の演説は続いた。
「が、しかし、時を重ねてパンツの世界樹となったアウタナと世界パンツの力があれば何事にも余裕で耐えられるのは言うまでも無いだろう!」
「世界パンツ……?」
 ぐったりとしたクレアの呟きなぞ関係なく、鮪はアテムへと続けた。
「いいか? 未来のアウタナを、いや、シボラを、パラミタを救いたければパンツでしっかりガードを子々孫々へと伝えていけ!
 パンツを忘れるな。如何なる時も伝えろ。そうすれば、アウタナは救われ、パンチと愛がより一層豊かに満ちた現代が、更に全てを救うだろう。
 パンツは文化だ!!」
「それはさておき」
 織田 信長(おだ・のぶなが)は冷静だった。
 アテムへと改めて言う。
「今の内にアウタナの根の防衛策をしっかりと構築しておきたい。
 もちろん、根の生育を阻害しないよう考えて、だ」
「防衛策ってもな……」
「危機が訪れた際に、それを退けられることが出来れば良いのだ。
 例えば、刺激を受けた時に供給されるよう仕掛けた栄養源を地下に確保し、有事の際は一時的にアウタナを活性化させるようなことが出来れば良い」
「……なるほど。つまり、さっき言ってた“パンツ”って仕組みを作っておくっつーことか」
「パンツ、か。おぬしに理解しやすいなら、それもいいだろう」
 古代シボラの重要な歴史に“パンツ”が加わった瞬間だった。




「あんたに伝えておきたいんだ。俺たちが知ってる、この世界で起こる全てを」
 ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)アルバ・ヴィクティム(あるば・う゛ぃくてぃむ)共に、自身らが知っているパラミタの未来を全てアテムに伝えていた。
 それにはアルバの無念に対する想いもあった。
 それらをただ黙って聞き届けたアテムへ、ヴァイスは言った。
「長い時間、未来の脅威に備えて準備や対策を練ったりすれば、シボラは助かるかもしれない。
 例えば、アテム自身がその時にシボラを守れるよう何か――」
 アテムが軽く手を掲げ、ヴァイスの言葉を止める。
「悪いが、俺には、一体どうやったら未来でお前達の助けになれるか分からない。
 ……すまねぇな」

 と――。
 アテムの住居へ古代シボラの民が慌てた様子で駆け込んできた。
「大変だ、アテム! アウタナがッ!」




 世界樹アウタナ。

 そのアウタナの枝が、今、次々と斬り落とされていた。
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)が斬巨刀でアウタナの枝打ちをしていたからだ。

「よい、しょー」
 ズッパーン、と枝を落として、もう一つの枝へと着地したアルコリアの前に、世界樹を登ってきたアテムが降り立つ。
「何しとんじゃああああああああ!!!」
「ガーデニングだよ?」
「がーで……なんだそりゃ?」
「世界樹でガーデニングって百合園スイーツのステイタス! ヤっちゃうぞー! って、ほら」
「ほう」
「重要なのは4っていう数字だから。枝4本残しておく感じで良いのかなって、それから――。

 邪魔するヤツは指先4つでダウンさせていい。
 4人までなら死んでも事故。
 気に入らないのは4回殴って身体に教え込め。
 おやつの時間は4回。

 以上4つのお約束を守ってがんばりますー」
 アルコリアは元気よく片手を挙げて言った。
 ちなみに、彼女が切り落とした枝は、民に爪楊枝に加工してもらう予定だったという。
 文鎮と迷ったが、「アウタナの文鎮」と称し鈍器として扱う人が多そうなので楊枝にしたとかなんとか。
 ちなみにアウタナの根本では、ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)が救済の聖域を用いてアウタナ自身をフォローしていた。
 4匹のフライングヒューマノイドを連れていて、エバーグリーンでアウタナの周りに植物を生やし、紅蓮の走り手で周りの植物を灰にして焼畑を行い、群青の覆い手で残り火の沈下と水分補給を行い、金色の風でアウタナを癒し……と4元素の力を使った農法を実戦中で――
「って、やめろやぁあああああああああ!!!」
「えー」
 アテムが繰り出した一撃を、アルコリアはひょいっと跳んで避けた。
 と――
「シィィィ! ボォォォォッ ラァァァァァッ!」
 『ゲゲの腕輪』とツァンダー変身ベルトによって、仮面ツァンダーシボラに変身していた風森 巽(かぜもり・たつみ)がアテムと連携するようにアルコリアに掴みかかった。
 ナコトの投げたフライングヒューマノイドによってアルコリアへの攻撃は阻まれる。
 アルコリアは、身を翻したついでに、もう一本の枝を斬り落とした。
「このあまぁああああああ!!」
 アテムが落ちてきた枝を掴み、跳ぶ。
 そして、彼は腰を思いっきり捻ってアウタナの枝を構え――
「ブチ込んだるっ!!」
 アルコリアへとブチ込んだ。
 その後、アルコリアとナコトは、フライングヒューマノイドを計3回投げつけ、捨てながら撤退したのだった。
 
 アルコリアが去って。
「助太刀、助かったぜ」
「我、アテム、トモダチ。トモダチ、助ケル、アタリマエ」
 野生の力みなぎるツァンダーシボラは、漲り過ぎて使用可能な言葉が少ないっぽい。
「友達?」
「シボラ、イノチ、タクサン。ミンナ、トモダチ」
「ああ、このシボラには様々な生命が溢れてる。皆、俺のダチだ。もちろん、お前たちも」
「未来ノ、シボラモ、イノチ、タクサン。トモダチ、タクサン」
「未来、か。お前たちの話じゃ、このアウタナは沈んじまってるらしいな。
 ……俺もまたヨボヨボのカチンコチンで誰を助けることも出来ず、老いたアウタナと共に沈むって話だ」「トモダチ、守ル、強ク、ナル! ソレ、シテンノウ!」
「……シテンノウ?」
「四天王、だよ」
 よいしょよいしょと樹を昇ってきていたティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)が言う。
「友達を守る為に、強くなれる。それが四天王だって」
「友達――未来から来たお前たちも、俺のダチ」
 アテムは、ふと、ツァンダーシボラの腕輪に気付いた。
「……これは」
「ボクたちの時代のシボラに伝わる秘宝だよ」
「貸してもらえないか? きっと返す」
 言ったアテムをツァンダーシボラが見返す。
「駄目か? ……そりゃそうだ、また会えるかすらも分からねぇもんな」
 ツァンダーシボラが首を振り、アテムの肩に手を置いた。
「タクサン、アシタ、会エル!キット、会エル!」
「えーとね、遠い未来にまた会える。きっとまた会えるんだって。
 だから、腕輪、大切にしてね」

 そして、アテムはその腕輪を借りることとなった。




「戦わなくて良いの?」
 カノン・エルフィリア(かのん・えるふぃりあ)は、レギオン・ヴァルザード(れぎおん・う゛ぁるざーど)へと訊いた。
「あのアテムって人と手合わせをしたくて、ここまで来たんじゃ……?」
 レギオンが、世界樹の上から降りてくるアテムの様子をもう一度見やってから。
「……知りたいことは分かった。
 古代の人間の戦闘方法。
 アテムは素直な戦い方をする。原始的、と言ってしまえばそれまでだが、神としての直感と身体能力があってこそだろう……」
 言って歩む彼をカノンは追った。
「やっぱり、シボラの国家神になるくらいだから地力あるのね」
「……今の俺たちでは相手にならないほど強いのは確かだな。
 全盛期の彼が現代に居たならば、どれほど心強かったか……」
「現代だともうヨボヨボのお爺ちゃんだからなぁ……。
 あ、ところで、あたしたちって、どうやって帰るの?」
 レギオンがピタリと足を止める。
 カノンは、その事をあまり気にしないまま続けた。
「やっぱり、来る時と一緒で、またあの自転車にぎゅうぎゅうに詰めて帰るのかなぁ。
 アンタ、アタシに気を遣ってくれたみたいだけど、結果、アタシを肩車って本当に無いからね!
 しかも、全体の指揮を取るとかなんとかで、わさわさ人が固まってるところの一番上に乗って、更に頭一つ出ちゃってて……
 ものすごっく恥ずかしかったんだからね!
 って、聞いてるの!?」
「……どうやって帰るんだ? 俺たちは」
「へ?」
 レギオンが改めてアウタナの方へ振り返る。
 その視線の先、彼らが出てきた時空の歪みは、そこに存在していなかった。




「これが……化石化する前のアウタナ……」
 多比良 幽那(たひら・ゆうな)は生命力溢れるアウタナの姿を見上げ、感嘆を漏らしていた。
「守りたい……」
 現代でナラカへと落ちいくアウタナを守るには、どうすれば良いのか。
 幽那には一つの考えがあった。
 しかし――――
「幽那様、さすがのわたくしでもお力になれませんわ」
 織田 帰蝶(おだ・きちょう)が、ふぅと首を振る。このメイドがしっかり働いたことなどほぼ無いが。
 ともあれ、幽那がしたかったことには、どうしても“足りない”のだ。
「良い案だとは思うんだがな……」
 アテムと大鋸は頭を掻いていた。
 アウタナを中心として、四方に、ニルヴァーナの世界樹の森から付いてきた世界樹の苗木を植える……そうすれば、育った苗木たちが現代のアウタナの助けとなってくれるかもしれない。
 しかし、四方に植えるには、幽那たちが持ってこれた世界樹の苗木だけでは足りなかったのだ。
 そう、困っていたところへ……。

「まあ、考えることは一緒やったっちゅうわけやな」
 日下部社が笑み、現れた。
 足元には、世界樹の苗木ちゃんを連れている。
 共に居た響未来が小首かしげ。
「この子も現代から付いて来ちゃったのよねぇ〜」
 チラリと王大鋸の方を見やってから、未来は続けた。
「ああいう子に育っちゃダメよ〜? 可愛くないから」
「可愛いと思います! 大鋸さん!」
 と言ったのは度会鈴鹿だった。
 傍らのイルと共に、彼女もまた世界樹の苗木を連れていた。
 反射的に出た言葉らしく、鈴鹿は、ハッとした様子を見せから。
「あの、あの、違うんです、その、なんていうか」
「んー、確かに名前は可愛いかも?」
 未来がマイペースに思案する様子。
「わんだーじゅ……ワンダージュ……ワンダー樹……」
 そして、未来は楽しそうに社の苗木を指差した。
「名前つけたげる。ワンダーちゃん。ね、良いでしょう?
 あなたが真のワンちゃんなのよ!」
「真のワンちゃんは大鋸さんだけですっ!」
 鈴鹿が思いっきり抗議する。
 そんな様子を横に。
「俺の苗木も役に立ちそうだな」
 瓜生コウらは、アテムに苗木を渡していた。
「で、俺たちのも、だ」
 エルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)ディオロス・アルカウス(でぃおろす・あるかうす)も苗木を持ってきていた
「例えば、アウタナの周りにこれらを植えておけば、根が広り、そのあやとりは、ネットの役目を果たすかもしれない」
「なら、ネットになりそうな網を始めから埋めておけば良いような気もしますがね」
「あやとり理論って言うだろ?」
「……貴方のオヤジなギャグも埋めますか」
 ディオロスが溜息をついた瞬間、エルシュは『見つけた!』という顔をした。
「そ・れ・だ」
 その後、良くわからないがエルシュとディオロスは延々と親父ギャグなどの死語をアウタナに向かって叫び続けていた。
「今回はおっかないのに会いに行くんじゃないから良かったと思ってたけど……」
 マイ・ディ・コスプレ(まい・でぃこすぷれ)が、ううっとしかめた目でエルシュたちの方を見やる。
「変なのが多いよ。この古代シボラに来たの」
「ま、それはともかく、私たちも世界樹の苗木を連れてきているの」
 メイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)が言って、連れていた苗木ちゃんたちへと手を向けた。
「これで、アウタナを救えるかしら?」

 こうして古代シボラへ送られた多くの苗木ちゃんたちは、
 アウタナへ植樹されることとなったのだった。


「さて――」
 大鋸は契約者たちへと言った。
「確かアクリト教授の話じゃあ、これ以上、俺達が直接この時代に影響を与えるとマズいらしい」
 しかし、また自転車に乗って帰ろうにも




 さて、弁天屋 菊(べんてんや・きく)ガガ・ギギ(がが・ぎぎ)もまた世界樹の苗木ちゃん植樹の協力者だった。
 そして、菊は諸々の理由でもって古代シボラの民に刺青を披露する事を主な目的としていた。
 ここで古代シボラの民が受け継いだ描画センスが、どのような開花を見せたのかは、
 フマナにあった古代の神殿遺跡の「黒い服を着た古代フマナ人がエリュシオン人と思しき男をジャンプさせている」壁画に見ることができる。
 しかし、それよりも重要な出来事があった。
 ガガは、現代でアテム老の助けとならないかと、苗木ちゃんを植樹した代わりに、アウタナの若木を現代へ持ち帰ろうとした。
 古代シボラの民はしっかりと、それを見ていた。
 
 御察しの通り――これが『万引き』の原点である。


 ■

 現代。

 龍頭がアウタナを呑み込み、地上へ吹き上がろうとしていた。


「アクリトさん……これは――」
 アクリトの手伝いを行なっていた上社 唯識(かみやしろ・ゆしき)は、シボラの奥地に存在する古代パラ実の校舎遺跡で“あるもの”を見せられていた。
「伝説によれば“原初の力”の使いが乗ってきたものだ、という」
「“原初の力”、ですか?」
 言った戒 緋布斗(かい・ひふと)にアクリトは頷いた。
「ニルヴァーナの遺跡で得られた情報によれば、パラミタ大陸を支えているアトラスも、ニルヴァーナ大陸を支えているイアペトスも元は、パラミタ大陸に住む巨人族に過ぎなかったという。
 彼らが大陸を支えるようになる前に、大陸を支えていた力――それが“原初の力”だろう。
 しかし、現代の我々が見れば、これは明らかに……」
「自転車、ですね……」
 気が遠くなるような年月を経た姿のそれは、どこからどう見ても、自転車だった。
「古代の民からすれば、多くの文化と物とを運んできた『彼ら』を大いなる者の使いだと思い込むのも自然なことだろう」
 そう言ってアクリトは改めて、目の前にあるそれらを見やった。
「蛮族を含めたパラ実生の多くが4以上を“たくさん(無限)”としか認識できないこともこれで説明がつく」
「……つきますか……?」
「そして、最近になって“元祖四天王”と見られる人物たちの名が刻まれた石碑が発見されたのだ」
 アクリトが画像を見せる。『チャリデキタ……』と上部に刻まれたその下には……
「古代パラ実の祖となった、元祖四天王、それは――」

 吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)
 南 鮪(みなみ・まぐろ)
 宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)


「大体、この4人だ」
「…………」

 4以上=たくさん(無限)。
 石碑には他にもうっすら多くの名前が刻まれていた痕跡があった。




 現代、世界樹アウタナ。

 アウタナと同化しているシボラの長老の身体には異変が起きていた。
 いや、彼の身体だけでは無い。
 化石化しているアウタナ全体に奇妙な現象が起き始めていた。

 化石にヒビが走り、その奥から脈動する緑の光が溢れていた。
 そして、ボロボロと崩れていく化石の奥から、若々しい樹の枝が、葉が、根が一気に噴き出したのだった。


「…………っ、ここは――」

 巽はボンヤリとする頭を振って、辺りを確かめた。
 周りには、共に古代シボラへと向かった契約者たちが転がっていた。
 琥珀色の欠片と共に。
 
 と、つい数分前に聞いていた筈の声がした。

「えらく久しぶりだな。
 いや……お前たちにとっては、ほんの一瞬の感覚か」

 アテムが立っていた。
 大鋸たちが知っているアテムより、少し老けていて、しかし、以前より逞しさが増しているようだった。
 ガクランを羽織り、腰には聖杭が下がっている。
 古代シボラへ渡った契約者たちはアウタナの特別な琥珀の中に収まり、
 時を止めた状態で、気が遠くなるほど長い長い時間ずっと、アウタナの内部に保管されていたのだった。
 
「“パンツ”(化石)は無事に役目を終えた。
 あの日から力を溜め続けていた世界樹の苗木たちは融合し合い、新たなアウタナとして代替わった。

 俺はアウタナと同化し、この日を待っていたってわけだ」

 老人の身体と精神の中で、全盛期の自分を眠らせていた、というわけらしい。

 アテムが巽へと腕輪を差し出す。
 
「約束、守れて良かった。
 ところで――久しぶりにバーガーが食いてぇな」


 アウタナは根が絡み合った4本の足を駆使し、地表へと這い上がって行ったのだった。