空京

校長室

創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

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魔術結界の展開

一方、そのころ。
エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)や、
エリュシオンの術者たちにより、
大規模な魔術結界の展開が行われている。

結界を作るため無防備な状態の魔術師達を守るために、
周りに迫ってくる黒い獣を、従龍騎士と協力して、契約者達が蹴散らす。

「『黒い影のような獣』が何なのかは分からないけれど、兎にも角にも結界だ。
結界を張っているエリザベート校長や術者達の元へ
獣が行かないように踏ん張ろうか、フラメル」
五月葉 終夏(さつきば・おりが)は、
パートナーのニコラ・フラメル(にこら・ふらめる)に呼びかける。
「ああ、『龍頭』などという厄介なものが昇ってきてはいるが
私達は私達の出来る事をやれば良いだけだとも。
結界がどのくらいの時間で張る事が出来るかは分からんが、
まぁ何とかなるだろう。はっはっは!」
ニコラが、終夏や周囲の者達を鼓舞するように、自信たっぷりに笑って見せる。

「行かせはしない!
グラウンドストライク!」
終夏の攻撃で、大地が割れ、尖った岩が黒い獣達に襲い掛かる。

グオオオオオオッ!

黒い獣達は岩に串刺しにされ、動きを封じられる。

「よし、今だ。フラメル!」
「この私の弓から逃れられると思うなよ!」
ニコラが、その隙に、アルテミスボウを撃ち、右往左往している、
残りの黒い獣たちにとどめを刺していく。
「ここはけして通さない!」
終夏は、再び迫る新たな黒い獣の群れに、グラウンドストライクを放った。


「さーて、捨てゴマ任されましたー! っと」
リリィ・ルーデル(りりぃ・るーでる)が、
わざとおどけた口調で言う。
パートナーのギフト神機 天羽々斬(じんぎ・あまのはばきり)を手に、
黒い獣の群れに立ち向かう。
「そうそう陣地には乗り込ませないよ。
雑魚どもだけじゃ物足りなさそうだし、大物にもきてほしいわね」
「うむ。
我はオロチを断つために生まれた機神の剣。
龍の鱗を裂き、肉を割り、骨を砕くために生まれし十握の剣なり。
主よ。我らの望み通り、強大な敵が迫っているようだぞ」
「そうこなくっちゃね!」
天羽々斬が指摘した通り、ひときわ大きな黒い獣が迫っていた。

「このあたしの一撃、その身で受けなさい!」
「我は戦場で獲物を狩るのみ!」
リリィが大きく振りかぶった大剣、天羽々斬が、大きな黒い獣を両断する。

グシュウウウウウウウウウウウウウ!

不快な断末魔をあげ、黒い獣はぐずぐずと崩れ落ちた。

「Bis Morgen♪」(んじゃ、また明日)
「またつまらぬものを斬ったか……」

リリィと天羽々斬が、獲物を背につぶやく。

他方、
雪 汐月(すすぎ・しづく)は、
前方が見渡せる高台で、黒い獣が迫るのを見ていた。
「『黒い影』が、溢れ出て来ている……。
私でも、あの影を倒す事ぐらいなら、出来ると思うの……。
だから、マデリエネ。心配しないで?
私は、大丈夫だから」
汐月はパートナーの
マデリエネ・クリストフェルション(までりえね・くりすとふぇるしょん)にそう言い、
駆け出すと、ブラインドナイブスで死角から迫り、黒い獣に攻撃する。

「心配しないで、って……あのな……
我は汐月の態度が一番心配なんだよ。
あの子は全く……」
マデリエネは嘆息しつつ、パートナーのサポートへと回る。

「……!」
数の多さから、逆に死角を突かれた攻撃に、汐月はハッとする。
「汐月には近づかせないよ!」
マデリエネの雷術が黒い獣を焼き焦がす。
「……ありがとう、マデリエネ」
「気にしなくていいよ。ただ、自分の命は大切にね」
そう、汐月に念を押すマデリエネだが。
(まあ、そうは言っても聞かないだろうから。
少しサポートせんといかんだろうなぁ)
そう思いつつ、パートナーの背中を守るのだった。





こうして、黒い獣との接近戦を、契約者達が行っているうちに、
魔術師達の結界ができていく。

「校長先生、パラミタ中からの祈りが届いています!」
フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)の呼びかけにより、
各地で祈りを行い、それを魔術結界に反映できるようにしていた。
「皆の想い、受け取ったですぅ!
これで、絶対、あいつらが出てこれないようにするですぅ!」
エリザベートが、味方を鼓舞するように叫ぶ。

(メテオスウォーム詠唱の時のように、皆の力を合わせることができれば。
それに、結界の力を強くすれば、
迎撃作戦と救出作戦の猶予時間を増やすことができるはずよ!)
フレデリカは、そう考え、結界の成功を願う。

「皆さん、頑張ってください!」
ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)が、
聖霊の力や叡智の聖霊によって、
エリザベートや周囲の術者達のサポートを行う。
フレデリカも同様に、自分より高位の術者のサポートを行った。

「ありがとうですぅ!
絶対に、成功させますぅ!」
エリザベートが、フレデリカやルイーザにお礼を言う。

そのころ、上空では。
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)
ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)の搭乗する
E.L.A.E.N.A.I.が、
魔術結界を展開する魔術師達が、上空から黒い獣に襲われないように守っていた。

「喰らいなさい!」
ツインレーザーライフルを撃ち、上空から迫る、空を飛ぶ黒い獣を、
近遠が撃ち落とす。
「最悪の場合は地上での白兵戦もお願いできればと思っていますが、
できればない方がいいですね……」
「ええ、エネルギーが切れないといいのですけれど」
マジックカノンを撃って地上の地形を変え、黒い獣の行動を阻害し、
味方が動きやすいようにしながら、
ユーリカがうなずく。
イコンの攻撃手段がなくなったら、ユーリカに地上で戦ってもらうことも、
近遠は考えていたのだ。
「時間との戦いですわ。
早く、結界が完成するといいのですけれど」
ユーリカが、さらに迫る黒い獣の影を捕え、つぶやいた。


「もう少しですぅ、あと、もう少し、耐えてくださぁい!」
魔術結界は、少しずつ組み上がっていった。

前線での戦いの苦境が伝わってくるため、
エリザベートが仲間を鼓舞する。

猶予は、後、いくばくかしか残されていない。