空京

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創世の絆第二部 第三回

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創世の絆第二部 第三回

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アウタナからの避難2

一方、避難民の中には、怪我人も多数発生していた。
黒い獣に襲われ、恐怖にかられるシボラの人々を、
【戦場のドクター】と呼ばれる高峰 結和(たかみね・ゆうわ)
アンネ・アンネ 三号(あんねあんね・さんごう)
優しくなだめる。
「もう大丈夫ですよ。
すぐに治りますからね」
回復魔法を駆使し、結和が怪我人の治療に当たる。
大型飛空艇ドール・ユリュリュズは、
医療船として救助活動の拠点となっていた。

「大丈夫?
心配しないでね。
すぐに安全な場所に移動するから」
ベッドをゆれないように固定し、
安全運転で、アンネ・アンネ 三号が移動を行う。

使い魔:フクロウに結和が持たせた
ペット用治療キットも、
物資の少ない現場において、とても役立っていた。

また、
蓮見 朱里(はすみ・しゅり)
アイン・ブラウ(あいん・ぶらう)は、
イコンでは感知しきれないであろう生身の人々を救うために、
それぞれ、空飛ぶ箒スパロウと、
小型飛空挺アルバトロスに乗り、救助活動を行っていた。

「どいて! 相手をしている暇はないの!」
歴戦の魔術で朱里が黒い獣を牽制し、
アインが、オートガードで一般人をかばう。

「危ない!」
空飛ぶ魔法で崩落する地面に落下しそうになった住民を飛ばし、
朱里がアインのアルバトロスに誘導する。
「大丈夫か?
さあ、この飛空艇に」
「ありがとうございます……!」
こうして、助けた住人達は、
大型飛空艇ドール・ユリュリュズなど、
大きな乗り物に連れて行き、移動できるようにする。

(この人たちにも家族がいるんだもの。
絶対に、また笑顔で生活できるようにしなくちゃ!)
朱里は、自らも子を持つ母として、そう決意していた。

透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)
璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)や、
伊礼 悠(いらい・ゆう)
ディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)たちも、
小型飛空艇の力を借りて、
より大きな乗り物へ誘導を行っていた。

空飛ぶ箒シーニュを用意した透玻は、貨物席をつけて、
最大4人を運搬できるようにしている。
「軽症のものはこちらへ来てくれ。
移動すれば治療が受けられるかもしれん」
迅速な移動を最優先するために、
透玻はその場での治療は極力行わなかった。
しかし、大型飛空艇ドール・ユリュリュズならば、
医療船としての設備が整っている。

「さあ、こちらに向かいますよ。
すぐに大きな乗り物が見えるはずです。
それまで頑張りましょう!」
透玻が空飛ぶ箒シーニュで輸送を行っている間にも、
璃央は、住民たちの避難誘導を行っていた。
歩くことができる者たちを集めて、
大型飛空艇へと誘導するのだ。
(できる限りの事は、やらせていただきます……!)

「怪我をしている方が……!」
「わかりました、ここは私達に任せてください!」
璃央の声に、
伊礼 悠(いらい・ゆう)
ディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)が駆けつける。

「大丈夫です。気をしっかり持ってくださいね」
悠がグレーターヒールをかけて、
黒い獣に襲われた住民を治療する。
「お願いします、ディートさん」
「わかった。さあ、こちらへ」
ディートハルトが、小型飛空艇に負傷者を乗せる手伝いをする。

「ここから先は私達が負傷者を護送する」
「そちらの皆さんは先に避難させてあげてください!」
「わかりました、お願いします!」
悠とディートハルトに負傷者を任せ、璃央が避難民を連れて移動する。

悠とディートハルトは、担架がわりの小型飛空艇を守りながら、
ゆっくりと移動する。
「私達にできることはわずかなことですけど、
確実にできることをしていきましょうね」
「ああ。私は必ず悠を守る。
だから、少しでも大勢の人を助けよう」
悠とディートハルトは深くうなずきあった。


酒杜 陽一(さかもり・よういち)
フリーレ・ヴァイスリート(ふりーれ・ばいすりーと)も、
生身での救助活動を行う者達である。
ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)の指揮の元、
陽一はナノ熱感知センサーや、
フリーレの従者の特戦隊、
ペットたちの力も借りて、逃げ遅れた人々の捜索や救助を行っていた。

「どこかに取り残された人や、倒壊した家屋に生き埋めになっている人がいるかもしれない」
「ああ、なるべく注意して探さなければな」
陽一の言葉に、フリーレがうなずく。

「ペンタ、よろしく頼む」
陽一は、ペンギンアヴァターラ・ヘルムにペット用治療キットを持たせ、
負傷者の治療を行ってもらう。

「ペットや家畜でも大切な家族だからな。
可能な限り連れて行くようにしなければ」
「ああ。さあ、一緒に歌を歌って行こう」
フリーレが陽一にうなずき、幸せの歌を歌う。
住民たちは少しずつ落ち着きを取り戻し、フリーレと一緒に歌を歌いながら、避難していった。


ブライトブレードドラゴンに乗った
スウェル・アルト(すうぇる・あると)は、
サンタの箒に乗ったパートナーの
アンドロマリウス・グラスハープ(あんどろまりうす・ぐらすはーぷ)とともに、
デスプルーフリングを身に着けていた。
万一、ナラカへと落ちてしまった人でも追いかけて助けられるようにという、
覚悟の表れであった。

「総奉行は、大きな乗り物に、皆を誘導して、って言った。
アンちゃん。
頑張ろう。私達にできることを」
「ええ、もちろんですとも!
スウェル、がんばりましょうね!」
スウェルとアンドロマリウスは、それぞれの乗り物に、
避難民を乗せると、大型飛空艇の方へと輸送していった。

今のところ、ナラカに落ちそうになっている人は見つかっていない。
それでも、スウェルとアンドロマリウスは、
もし見つかったら、危険を顧みずに助けるつもりだった。


「どれくらいの人が巻き込まれたのでしょうか?
急がないと駄目でしょうねえ」
神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)が、周囲を見回してつぶやく。
回復魔法を使っての怪我人の治療や、
温かいスープを配っての炊き出しなどに、
翡翠は走り回っていた。
「時間との勝負となると思いますが、
あ〜主殿は、無理しないで下さいね?
また、倒れますよ……自分より他人の事、優先し易い方なんですから」
山南 桂(やまなみ・けい)に釘を刺されるも、
翡翠は、どうも聞いている様子はない。
「怪我ですか?
どうぞ、見せてください」
回復魔法を惜しげなく使い、怪我人を気遣っている。
「主殿、聞いていませんね……」
桂は嘆息した。

そうしていると、暴れている怪我人がいる。
「放せ、俺はまだ戦える!」
怪我をした契約者のようだった。
「じっとしてないと駄目ですよ」
「なんだ、おまえは……ぐふっ!?」
翡翠は恐い笑顔で怪我人を気絶させ、大型飛空艇へと運んでいく。

しかし、やがて、翡翠自身も、その場に座り込んでしまう。
回復魔法の使い過ぎで、気力と体力が尽きたのだった。
「大丈夫ですか、主殿。
言わんこっちゃない……」
「すみません……まだ大丈夫です」
「何を言ってるんですか。ほら、こっちに来てください」
そう言い、桂は翡翠を強制的に休ませるのだった。



避難民を誘導していた
永井 託(ながい・たく)
那由他 行人(なゆた・ゆきと)の前に、黒い獣の群れが現れる。
「これはちょっと、数が多いねぇ。
やばいんじゃないかなあ」
言葉では余裕を出しつつも、
託が、黒い獣の群れを前に緊張した面持ちで言う。

「大丈夫、俺が、俺たちが絶対守って見せるから!」
行人が、黒い獣の群れの前に立ちふさがる。

グルルルルルルル……。

不気味なうなり声をあげる黒い獣達に、
行人は、けして引く様子を見せない。

「俺の名はブレイブセイバー!
誰も……死なせるものかああああああ!」
守護天使として、セラフィックフィールドを発動させ、
行人が、皆の盾になる。

「うん、行人ならできるよ、大丈夫」
22式レーザーブレードで、
残った黒い獣を弾き飛ばしながら、
託が、避難民を誘導する。
行人が黒い獣を食い止めている隙に、
大勢の避難民が安全な場所に移動することができた。

「あまりがらじゃないんだけれどねぇ。
行人もがんばってるんだ。
僕がやらないわけにはいかないよねぇ」
託が歴戦の回復術で怪我人の治療を行いつつ、つぶやいた。

ヒデオ・レニキス(ひでお・れにきす)
パートナーのリフィ・アルクラド(りふぃ・あるくらど)
レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)
パートナーのミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)も、
生身での避難誘導に尽力していた。

「世界を救うのは、他の人たちに任せた!
だから……絶対に救ってくれ!!」
多くの人が世界を救う戦いに参加している今、
目の前の人を救おうと、ヒデオはアウタナの避難活動に志願したのだ。
「怪我をしている人はいない?
回復魔法をかけるから、こっちに来てね」
リフィが、避難民達に優しく語りかける。

「うんうん。目立つオフェンス部分は他の方にまかせて、
あちき達はこの人達を助けましょうねぇ」
ヒデオの言葉に、レティシアがうなずく。
「避難民の方々にとってはこの戦い自体が災害ですしねぇ。
早く安全な場所に行きましょうねぇ」
「本当に避難民の方々が一番の被害者ですからね」
ミスティも、レティシアの言葉にうなずく。
心身ともに、ケアできるよう、ミスティは全力を尽くすつもりだった。

「ああ、俺も治療は使えるし、戦いにも対応できる。
黒い獣から皆を守るくらいはできるはずだ」
「ええ、いざとなったらお願いしますよぅ。
大型飛空艇に移動すればこっちのものですねぇ。
イコンも守ってくれるし、怪我を治療する設備もありますからねぇ」
ヒデオにレティシアは言い、
協力して避難活動を行ったのだった。

アウタナ付近の小さな村にて。
「荷物はいいから、とにかく逃げなさい!」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が、
避難民達に声をかける。
突然の出来事に家財道具一式を担いで逃げようとする者もおり、
セレンフィリティがそれを見とがめて止めているのだ。
「まずは命が助かることが先決でしょ!」
避難民達はしぶしぶ必要最低限のものだけ持って避難を開始する。

「大丈夫?
すぐに、怪我人を搬送する乗り物を用意しますからね」
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が、
簡単に包帯を巻くだけではあるが、応急手当てをして、
セレンフィリティが呼んだ仲間の乗り物が到着するまで、
怪我人に優しく語りかける。

やがて、乗り物や回復魔法を使える仲間が到着し、
怪我人が大型飛空艇に搬送されていく。

「だから、早く逃げなきゃダメだってば!」
セレンフィリティがパニックになって
家の柱にしがみついている人を無理やり引きずっていく。

セレンフィリティとセレアナが当初、懸念していたような、
暴徒や火事場泥棒は発生していないが、
混乱している人達を、
無理やりにでも避難させなければいけないような状況は発生していた。

それでも、契約者達の支援や励ましのおかげで、
多くの人は落ち着きを取り戻し、
迅速な避難が行われているのだった。