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リアクション
校舎建設予定地から少しばかり「ニルヴァーナへの回廊」に寄った一画は、多くの「呻き声」が沸き揺れていた。先の爆発で負傷した教導団員たちがここに集められ、順に治療を受けている。
手当てをしている一人、高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は、
「はい、固定しますよー、すぐに楽になりますからね」
正に天使のような笑顔と気遣いで丁寧に治療を行っていた。
「はい、血を洗い流しますよーはい、はーい、なるほど、少し深いですねえ」
医療に関する専門知識は、まだまだ足りないと自覚している。志を同じく治療に当たっているクエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)やサイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)に比べたら自分など足下にも及ばない。自分には「医療物資の請求資料を作成する」といった程度の仕事がお似合いだとも感じていた。それでも多くの負傷者が運ばれてきた時、その光景を目の当たりにした時、彼女の体は自然と動いていたという。医者として、医療に携わる者として。患者を前にしての迷いは一切に無かった。
そんな結和とは対照的なのがパートナーのアヴドーチカ・ハイドランジア(あう゛どーちか・はいどらんじあ)であった。彼女はというと、
「はいはい、これでお終い。……お前さん、今度私のクリニックにもおいでよね。そうしたらこいつで治療してあげるからさ」
と言いながら『パール(海京の冷凍マグロ)』をズイと見せつけた。
「殴っても良し、擦りつけても良し、キスもビンタも効果覿面。もちろん症状に合った方法を選ぶから安心して良いぞ」
アヴドーチカ曰く、『パール(海京の冷凍マグロ)』で治せぬ症例は無いそうだ。その自信と開き直り加減は結和も見習うと面白いかもしれない。
開き直っているといえば、野戦病棟の雰囲気さえ漂うこの場所において、
「ズズズズズ」
と、茶をすする老人が一人。その名を野々原 創介(ののはら・そうすけ)といった。
「の、野々原さん?! 手伝ってくださいよ〜!」
泣きそうな声で堂島 結(どうじま・ゆい)が言う。負傷者が運ばれてきてからというもの、それこそずっとに休みなく患者を診ているというのに。野々原はと言えば「そう言われても、むしろ邪魔にしかならんからのぅ……」なんて言って、一人、のんきに茶を啜っていた。
「そんな事ないです! 手伝って欲しいことはたくさんありますし! このままじゃ目が回っちゃいますよ〜!」
「眼球周辺の筋肉は固くなりやすいからのぅ、良いマッサージになるじゃろうて」
「え?? ………………はっ! 違いますよ! 本当に目を回すわけじゃないです! 眼球は微動だにしませんよ!」
「ほっほっほっ、微動だにせずに患者を診るか。器用なものじゃのぅ」
「そうじゃなくて〜! お願いです〜、手伝ってください〜!!」
「そう言われても、むしろ邪魔にしかならんからのぅ……」
結局野々原は手伝ってくれそうにはなかった。彼は彼で周囲に目を光らせては外敵の襲撃に備えているのだが、端から見れば「茶を飲んでサボっている老人」にしか見えない。何とも不器用なご老人である。
ニルヴァーナに降り立ってから今まで数度に渡り、彼女たちは簡易診療所を開き、活動していた。今もこうして負傷した教導団員たちを受け入れ、治療を行っている。
校舎内に医療施設が設立されるか、はたまた別に診療所が設置されるかは、今もまだ決まっていない。というよりも、むしろ今、この時、同時刻別地点にてそれらを検討する会議が開かれているはずである。
どのような施設が設置されようとも、それらが完成するまでは「自分たちがニルヴァーナでの医療活動を支えていく」その覚悟は出来ている。
例え目が回ろうとも。患者達が落ち着くまでは、彼女たちの手は決して休まることはないのであった。
「さぁさぁ皆さん、こちらにどうぞ」
荀 ?が手を差しのべて参加者たちを誘ってゆく。
校舎建設予定地から2kmと離れた一画には多くの契約者たちが集まっていた。目的は「己が考えた学科案や建築物」を発表すること、同時にそれらを傍聴すること。獅子導 龍牙(ししどう・りゅうが)の発案により開催が決まった「会議」がこの場所で行われようとしていた。
議長席には当然「ラクシュミ」が座り、その後方に今回は龍牙と?が座る。突発的に開催が決まったため、発案者である龍牙が今日の司会を務めることになった。
「椅子は足りていますか? 並ぶ必要はありません、顔が見えますよう移動して下さい。半円形であれば構いませんので」
しばらくと人の動きが見て取れたが、全員が席を確保したのを確認してから?は龍牙に合図を送った。
「それじゃあ始めるぜ。まず始めに、この会議の目的は皆の意見を聞いて集めることだ。この場でどうこうしたり、決定したりする事は無いと思ってくれ。「いろんな案を聞いた上で判断したい」というのが校長であるラクシュミの考えだ」
名前を出されたからか、はたまた一人だけ皆の視線を受ける位置に座っているからなのか。ラクシュミの両手は行儀良くお膝の上、それでも腕にも肩にも完全に力が入っていた。「裁判官」という気構えでも良いというのに、その様はどうにも「被告人」にしか見えなかった。
「人数が多いからな、学科案と施設案のブロックに分けて行うこととする。まずは学科案。発表者は名前を言ってから案を発表し、それにラクシュミが応える、という流れで行こうと思う。質問は…………無いかな。それじゃあ、はじめの人、お願いします」
「「よろしくお願いします」」
「レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)とイヴェイン・ウリエンス(いべいん・うりえんす)だ。俺たちは「冒険科」と「開拓科」は必須だと考えている」
「「必須、ですか」」
「あぁ。冒険科はサバイバルと戦闘を主軸に置き、開拓科は開墾、調査、整備を主軸に置くものだ」
「先程、話に出ていた「ハンターオフィス」なるものと考え方は近いかもしれませんね。それでもこの2つが有れば最低限、学校運営に困ることは無いと自分たちは考えています」
「私が……イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)、とジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)……です。えぇと、私たちは………………あの……」
「(イーリャ!! しっかり!!)」
「え?!! あっ……『テレパシー』?? うん……分かった」
「???」
「あのっ!! 私たちは「イコン科」が必要だと思います」
「「イコンですか。確かに今は持ち込めないですからね」」
「はい。イレイザーの外敵を相手にする時も……それから限られた資材で活動しなきゃいけない状況が続くと思いますから……汎用性の高いイコンは重宝するかな……って思って」
「「確かに、作業効率も格段に上がりますし。必要かもしれませんね」」
「次は俺だ!! 南 鮪(みなみ・まぐろ)、それから種モミの塔の精 たねもみじいさん(たねもみのとうのせい・たねもみじいさん)だ! 俺たちは「ポータラ科」を提案するぜ!」
「「ポ……ポータラカ??」」
「おうよ! 俺の聞いたところでは、古代ニルヴァーナにはポータラ科という科が存在し、それがポータラカの由来になったそうじゃねぇか」
「「そうなんですかっ?!! 初耳ですっ!!」」
「勉強が足りぬようじゃのう。古代の技術産物を研究したり複製したり出来れば、この地にとって大きな財産となろうて」
「おうよ! そいつらを上手く使う方法を学んだり、拉致方法を探ったりパンツについて研究したり―――」
「「えっと……今、パンツって言いましたよね?」」
「ポータラカの技術がありゃあ、ムチムチに食い込むパンツだって、直接触れることなく脱がす事だって出来るはずだぜ! レッツ「ポータラ科」!! ビバ「パンツ学」!!」
「「次の人っ!! 次の人お願いしますっ!!」」
「藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)、宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)です。私が提案する学科は「干し首学科」です」
「「干し首学科っ?!!」」
「えぇ。プレーンな干し首に始まって、さくらんぼ・だんご・けん玉とその種類は多く、多彩な選択肢と知を擁し、学ぶ甲斐があります。シボラのオップイコ周辺の首狩り族などは実に良い教例の一つですね」
「「あ、いや……あの……その……」」
「…………まぁつまり、パラミタとニルヴァーナの関係性を深めるためにも、パラミタの文化たる干し首を学ぶ学科が必要だと、お嬢は言ってるんでさあ」
「「………………す、少し時間が欲しいです」」
「木本 和輝(きもと・ともき)と雹針 氷苺(ひょうじん・ひめ)だ。俺たちの提案は「研究科」「探索科」「開発科」の3つに分けることだ」
「「ホッ。良かったです、まともな方です」」
「学科内容は名前の通りだ。ある程度大きなまとまりにした方が生徒にとっても分かりやすいだろうし、相互に協力し合う体制も取りやすいだろうからな」
「できる限りパラミタの世話にはならんよう、学内で色々できた方がいいと思うんじゃよ。新たに構築するなら学校内で完結できるシステムにするべきじゃろう」
「「相互に協力し合える学校ですか。なるほど、参考にしたいと思います」」
「佐野 誠一(さの・せいいち)、こっちは結城 真奈美(ゆうき・まなみ)だ。俺たちは「農業科」の設立を提案する」
「「農業ですか。確かに必要ですよね」」
「あぁ。学校を作るにしても、遺跡を調査するにしても、水と食料が無ければ始まらない。自給自足の算段は早めにつけた方が良いだろう」
「ニルヴァーナの地下には温泉脈が流れていると聞きました。近くに火山脈があるなら、農業には適した土地と言えると思います」
「「そうだね、温泉脈はまだ可能性の段階だけど、見つかれば実証されるものね。前向きに、考えてみます」」
「風祭 隼人(かざまつり・はやと)、風祭 天斗(かざまつり・てんと)だ。俺たちも農業だ、学科名は「食料生産科」だけどな」
「「食料生産科?」」
「あぁ。何らかのアクシデントがあれば、パラミタからの支援が途絶えるケースだって考えられだろう? 自給自足できる状態に早めにしなた方が良いと思うんだ」
「『種モミマン』はたくさん連れてきたから、許可さえ貰えれば、すぐに作業に移れる」
「「分かりました。農地を作るという案は早めに実現できるようにしたいと思います」」
「武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)、そしてヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)だ。俺たちは「飛空艇操船科」及び「飛空艇造船科」の設立を希望する」
「「飛空艇を作ったり……整備したりする、ということですよね?」」
「その通り。機晶技術を活用すればこの地とて飛空艇の造船は可能、更には物流の活発か化も見込めるだろう。新校に「国際飛空艇ステーション」を併設できれば、その効果は一気に跳ね上がる。そうなれば大規模な学園研究都市にしたとしても十分に成り立つ上に魅力的な都市となることだろう」
「「あ、でもまだそこまでは……」」
「私たちは学校や都市の防衛面が心配なのです。防衛のためには仲間が必要です、加えて「大型飛空空母」や「飛空戦艦」、「戦略型決戦機晶姫」なども手配できれば最良だと考えています」
「「うん……とりあえず、色々考えなきゃいけないのは分かったわ。参考にします」」
「ストップ! そこまで!! ちょうど「施設」の話が出たからな、ここで「学科」に関する発表は終わりにする。続きは明日だ、ここからは「施設」の提案に移る事にする。最初の人、はい、どうぞ」
「本宇治 華音(もとうじ・かおん)と申します。こっちは古井 エヴァンズ(こい・えう゛ぁんず)です。私たちは「温室」の施工を希望いたします」
「「温室? 野菜を育てるアレですか?」」
「はい。先程「農業科」を提案された方もいらっしゃいましたが、食用というだけでなく、ニルヴァーナのように草木が見当たらない土地にでも生えるような植物を研究したり、地球の植物がどのように成長するのかも調べたり。温室があれば様々な研究が可能になると思うのです」
「さっき水脈の話が出てただろ? アレだ、こっちの温室もそれを使えばいい。地下水だってあるだろうしな」
「「そうですね、どちらも確認できれば設置しても良いかもしれません。前向きに考えましょう」」
「よろしくお願い致します」
「ザウザリアス・ラジャマハール(ざうざりあす・らじゃまはーる)、そして{SNL9998771#ニコライ・グリンカ}よ。話しは重なるようで異なるわ! 私たちは「温泉」を希望するわ!」
「「温泉ですか〜、私も大好きです」」
「待って、「温泉」は「温泉」でも私の言っている「温泉」はただの「温泉」では無いわ。ずばり「混浴温泉」よ!!」
「「こっ……混浴ですかっ?!!」」
「やはりその反応ね。でもね、裸の付き合いこそ絆が深まるというものよ、それはすなわち戦場での連携にも影響してくるわ。チームワークを強化する為にも、男女間の壁は取っ払うべきよ」
「「でっ……でででででもっ」」
「知っているか? 温泉の歴史を紐解けば元は男女混浴から始まってる。限られた資源、この場合は水や熱源になるが、それらを有効に無駄無く使うためには混浴が最も合理的なのだ」
「「それは……でも…………「温泉」は作っていいですけど………………でもやっぱり「混浴」は少し考えますですっ!!」」
「皆川 陽(みなかわ・よう)とテディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)です。ボクは生徒達の憩いの場として「薔薇園」を作りたいです」
「「薔薇園。薔薇の学舎のような、ですか?」」
「そこまで大がかりじゃなくても良いんです。そうですね、花壇レベルで構いません、水源さえ見つかればすぐに作れますし。あ、もちろん水源もボクらで見つけますよ、うちの犬に掘らせますから」
「えっ……」
「掘ってくれるよね? それとも掘られたいのかな?」
「……イエス・マスター! 喜んでー!!」
「月詠 司(つくよみ・つかさ)と、シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)です。専門でもない私が言うのもなんですが……私は「天文台」の設置を提案します」
「「天文台というと、研究施設ももれなく付いてくるアレですね♪」」
「はい。未開の地や未開の土地における天体観測は地質調査などと同様に探索の基本になると思うんです。ニルヴァーナの天体も観測すれば何か有益な情報が得られるかもしれませんし」
「ワタシはあの月が怪しいと思うのよ♪ あの黒い方の月ね、露骨すぎるでしょう? 案外『敵』の前線基地とかゲートとかだったりして♪ くぅ〜、面白くなってきたわ★ ココはワタシのターンって事かしら★」
「ターンって……シオンくん、トラブルは勘弁してくださいよ」
「「前線基地かどうかは分からないけど、「天文台」があると確かに色々な情報が得られるかもしれないね。前向きに考えましょう」」
「早川 あゆみ(はやかわ・あゆみ)、それからメメント モリー(めめんと・もりー)よ。私たちは「講堂」を提案するわ。それも、できるだけ「大きな講堂」よ」
「「できるだけ大きな、ですか。ふふふっ」」
「言うだけならタダでしょう? 学校の中心部にあって、とってもとっても大きな講堂よ。多目的に使える事は勿論だけれど、この先ニルヴァーナの住人が増えたら、避難所としても使えるようにしたいわね。何かが起きた時、みんなが集まる目印になってくれるような、そんな場所になれば嬉しいわ」
「はいはい、じゃあボクも提案〜。講堂の名前はラクシュミちゃんの姓を取って「ディーヴァ講堂」ってどうかな? 校長先生の名前っていうのは勿論だけど、「姓」っていうのは、ラクシュミちゃんのパパさんやママさんが更にそのご両親から継いできた「家族の繋がり」っていう意味もあると思うんだ。家族だけじゃなくって、仲間や友達……色んな人たちとの繋がりや絆を大切にする事を忘れないように、って気持ちを込めて、この名前を付けたいな♪」
「「……ありがとう。すごく、ステキです。そうですね、どちらにせよ講堂は必要だと思います」」
「はいはーい、そこまでー。今日はここまでにしよう。残りは明日以降だな、明日は朝からやるつもりだから、そのつもりでよろしく。それじゃあ、お疲れさん」