空京

校長室

【神劇の旋律】聖邪の協奏曲

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【神劇の旋律】聖邪の協奏曲

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第1章 波

 シャンバラ宮殿の近くにある野外ステージで、女性中心の楽団が演奏会を行っていた。
 街に訪れていた人々は足を止めて、美しい音色に耳を傾けていた。
 楽団が奏でている曲は、古代シャンバラ時代に、女王に仕えていた者なら聞いたことのある曲。
 それは、シャンバラの女王に捧げる為に作られた曲。
 シャンバラの女王に献上されていた、讃歌だった。
 しかし奏でられていたその曲は、メロディは間違いなく讃歌なのに。
 正しく、人々の心に響くことはなかった。
 心を惑わせ、意識を奪い。
 呪われたかのように、人々は女王の元へ歩き出す。
 人々の数は数十から数百……そして、数千へと膨れ上がり、ひたすら、王宮を目指して歩く。
 女王、アイシャ・シュヴァーラ(あいしゃ・しゅう゛ぁーら)の心をも闇に引き込むために。

「あれ……なんかおかしいよ」
 フィッツ・ビンゲン(ふぃっつ・びんげん)は、パートナーのルーザス・シュヴァンツ(るーざす・しゅばんつ)と共に、空京に食事をしにきていた。
 立ち止まって野外ステージから流れてくる音楽に耳を傾けていたところ。
 周りの人々の様子がおかしい事に気づいた。
「ううっ、眩暈が……」
 そして自分自身も。
「女王のところに行きましょう。女王様にも音楽を聞かせましょう……」
 ルーザスがつぶやいて、シャンバラ宮殿の方へと歩き始める。
「そうだね、そうすればいいんだ。行こう。アイシャさま、アイシャさま……ふふ」
 ふらりと、フィッツも歩き出す。
「待ってください!」
「お主らは契約者じゃろう?」
 二人の手を、ルイ・フリード(るい・ふりーど)深澄 桜華(みすみ・おうか)が掴んだ。
「気をしっかり持ってください。抗えるはずです」
 ルイは、宮殿へと向かおうとするフィッツの腕を掴んで引っ張り、もう一方の手で、別の市民の腕を掴んで、引っ張りよせる。
 桜華も、ルーザスと、近くにいた子供の手を引っ張って、路地の方へと連れていく。
「ああうんそう。宮殿じゃない、ご飯を食べに来たんだ」
「そうです、音楽でお腹いっぱいな気分になってしまい……」
 フィッツとルーザスは頭を振って、旋律の支配から逃れていく。
「そうです。この方々を頼みますッ!」
 ルイは桜華と共に、宮殿に向かう人々を引っ張って路地へと押し込める。
 何が起きているのかはよくわからない。
 だけれど、市民を行かせてはならないことは解っていた。

「魔獣さん、駄目なの! 襲ったら駄目なの!」
 及川 翠(おいかわ・みどり)が叫び声を上げている。
 突如街に現れた魔獣が無差別に人々を襲い始めたのだ。
「……一丁、追加で仕事といくか!」
「ありゃりゃ…せっかくお仕事終わったと思ったら、またやるの? まぁ、いいけどさー」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)と、ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)は、ステージの方から現れた魔物の方へと走る。
「お前等の相手は、こっちだぜ!」
 エヴァルトは手当たり次第、魔物に傷をつける。
 興奮した魔物を引き付けて、ステージ後方へと走っていく。
「誰かが魔獣さんに襲われちゃったら駄目なの!」
 翠は空飛ぶ魔法↑↑で飛んで、街中へと走っていく魔獣を追いかけて場所を知らせていく。
「出来るだけ傷つけずに済ませたいけれど……」
 ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)も、もふもふ察知で、魔獣の居場所を捉えて対処に走る。
「ここもマズイが、市街地にも行かせたくないんだが」
 閃崎 静麻(せんざき・しずま)は、小型飛空艇ヴォルケーノに乗り込み、上空へ飛ぶ。
 そしてステージ後方、人々のいない方に引き付けられた魔獣を数匹狙撃した後、高台へ下りる。
「操られている市民のことも攻撃してくるようです。彼らに防ぐ術はありません!」
 レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)はゴッドスピードで身体能力を上げ、宮殿に向かおうとする市民に飛び掛かった魔獣に、ライド・オブ・ヴァルキリーで急接近し至近距離で乱撃ソニックブレード。
「一匹に時間をかけてはいられません」
 一気に片付けて、次の魔獣の対処に走る。
「ああ、だが市民を巻き込むわけにはいかない」
 静麻がスナイパーライフルを構える。
「あっちにいるの! 魔獣さんに、襲われちゃうの!」
 上空から翠が指した方向に、公園に走り込んだ魔獣の姿があった。
「任せておけ」
 静麻は急所に狙いを定めて、とどめの一撃でワンショットキル。
 直後に別の場所から悲鳴があがる。
 襲われてしまっている市民がいた。
「意識のある方は建物の中へ入ってください!」
 声を上げてレイナが駆け付け、魔獣を打倒す。
「魔法晶女ロートラウト、起動! なんちゃって。張り切って行くよー!」
 ロートラウトが、ステージ後方の広場へと出たエヴァルトと合流をする。
 2人は背中合わせで立ち、向かってくる魔獣達と対峙する。
「行くぞ!」
「了解ー!」
 襲い掛かってくる魔獣を、ドラゴンアーツで上げた身体能力で躱し、振り向いて飛ぶ。
「消え失せろ!パラテッカァァァァ!!」
 一か所に集まった魔獣を、歴戦の魔術で攻撃。
 エヴァルトの攻撃に合せてロートラウトも前進し、ミサイルを発射。
 2人は魔獣を一気に数匹、滅ぼした。